2001.12.18 15:00-17:00 JEPA
 たまたま紙だった2001 日本電子出版協会セミナー資料
イースト株式会社 下川和男
shimokawa@est.co.jp

 21世紀の最初の10年、紙に印刷する出版からインターネット出版への大転換期となります。
 昨年、ご好評いただきました「たまたま紙だった」の続編として、今年(2001年)何が起こったのか、そして来年どうなるのかについて、海外での事例をもとに、ご紹介します。

■■■読書端末■■■

●ジェムスター
http://www.ebook-gemstar.com
・2000年12月 華々しく登場 二種類で5万台を販売
・2000年1月 eBookメーカ2社を購入。 2000年12月、2001年3月に発売
・REB1100 モノクロ Half VGA、NuvoMedia社 Rocket Book
・REB1200 カラー VGA、SoftBook Press社 SoftBook
・ヘンリー・C・ユエンは、テレビ録画予約のGコードの発明者。彼の四度目の事業
・二度目は、テレビガイド社の買収。テレビ情報誌。毎週1000万部、3000万読者
・三度目は、EPG(電子テレビ番組表)。 日本では、電通、東京ニュース通信社と提携
・2001ブックメッセの会場で、ジェムスターとドイツ、ベルテルスマン系のオンライン書店BOLの共同記者会見が行われ、ジェムスターの読書端末を、ドイツでも販売するとの発表があった。年内にドイツ語の書籍千点をそろえて、BOLから販売するとの事。来年にはフランスでも千点の書籍をイーブックにして、仏語版を発売する。
・2001年8月 200ドル分のeBookクーポン付き販売
・リード・イット・ファーストというプロジェクトを立ち上げ、大手出版社とタイアップして、ハードカバーを出す前にイーブックで販売する、という戦略を展開中。
・2002年、REB1100、1200の後継機を発売予定 $299/$699 ⇒ 半額に!

●フランクリンのeBookMan
http://www.franklin.com
・2001年春販売開始 Palmと同サイズ。 モノクロ200x240ドット 130〜230ドル ⇒ 値下げ
・低価格のワケは、オリジナルRISCチップ、オリジナルOS、オリジナルAP
・米国の電子辞書デバイスのトップ・メーカー、辞書、聖書
・本を読む、朗読を聴く(Audible)、音楽を聴く、PIM(予定表、ToDo、電卓)、レコーダー
・読書ソフトはFranklin ReaderとMicrosoft Reader(eBookMan版)を用意
・コンテンツは、自社サイトからダウンロード販売

●東芝&EBIの見開き端末
・東芝の液晶技術 Double VGA? 960x640 カラー、見開き二画面
・2001年4月の東京国際ブックフェアで一般公開、月刊アスキーの表紙を飾る
・EBI(イーブック イニシアティブ ジャパン)社が、マンガをデモ
・プロトタイプで、後ろにPCが隠れている ⇒ 一年で、本体に組み込める

●ポケットPC
http://www.microsoft.com/japan/mobile/pocketpc
・Windows CE を使った、Palm対抗の胸ポケットに「押し込めば」入る、コンピュータ
・Quarter VGA 320x240、手書き認識、CFカード(P-inカード)でインターネット接続
・WindowsとWindows CEの違いはHDの有無 ⇒ 起動が早い、壊れにくい
・2001年10月 カシオ ラジェンダ 29,800円 USでは$199 他の半額
・HP、Compaq、カシオ、東芝、NEC、・・・
・日本で出荷される、ほぼすべてのポケットPCにT-Timeがバンドルされる
・pdabook.jpなどから電子書籍をダウンロード販売
・2002年Windows CE.NET(CE 4.0)が登場 SVGA(800x600)以上をサポート

●タブレットPC
http://www.microsoft.com/windowsxp/tabletpc
・2000年11月 Comdexで発表 Windows XPベースの板型コンピュータ
・2001年11月 Comdexで9社の試作機が登場 富士通、東芝、Compaq、Intel、ACERなど
・すべて、XGA(1024x768) ⇒ これなら本が読める 40文字×20行以上 1.0Kg以下
・2002年秋ごろ登場予定 しかし、日本のメーカは今のところ意思を持っていない
 ⇒ 誰か、まとめて買ってくれるなら、読書端末として販売しても良い
・パソコンの新しい使い方を提案する ⇒ 日本法人のデスクトップ製品売上、10%アップを目標

●イーインク端末
http://www.eink.com
・米国のベンチャー企業、イーインク社の表示技術を使った読書端末
・凸版印刷がイーインクと提携し、カラー化を担当
・ディスプレイはフリップスが量産体制に入る
・フランクフルトで、日系の某社が参考出品
・液晶のように後ろから光が出るバックライト方式ではなく、一般の紙と同じように自然光で読むことができる。文字や線の輪郭も鮮明で、非常に読みやすい。
・イーインクは、電源を切っても映像が残るので消費電力が少ない、液晶より薄いなどの利点があるが、表示に多少の時間がかかる、今のところモノクロのみ、ということで、読書端末には最適な表示装置である。

■■■読書ソフト■■■

●アドビeBook Reader 2.2
http://www.adobe.co.jp/products/ebookreader
・待望の日本語版が、2001年10月ダウンロード開始
 縦書き、ルビ、外字、右綴じもサポート ⇒ PDFなので、当たり前
・中央公論新社、10daysbook(鬼太郎)、Nakata.Net、丸善(理科年表)など好調
・米国では、アドビeBook Uが順調、大学教科書のダウンロード販売システム
・2001年9月、CE版でリフロー(テキストの流し込み)をサポート <=> PDFの思想には合わない
 しかし、同じコンテンツを異なる解像度で読むためにはやむを得ない
・2001年10月、ドイツ語、フランス語、スペイン語版のイーブック・リーダーを発表
・2002年 Acrobat ReaderがeBook機能を吸収できるか?、 CE版、Palm版は?
 Acrobat ReaderのCE版は、米国で提供開始

●Microsoft Reader 2.0
http://www.microsoft.com/reader
・2000年8月 v1.5ダウンロード開始 初日10万本 CE版をPC用に修正して提供
 書店はBN.com、2000年12月よりアマゾンも参入 無料書籍100点
・2001年10月 約束どおり、Windows XPの出荷に合わせて、ダウンロード開始
 書体やサイズの変更、リフロー、内部辞書、テキストの読み上げなどの機能を追加
・内部辞書: マイクロソフト・リーダーには辞書引き機能があって、現状では英英辞典が入っているが、これとは別に、個々の書籍単位に辞書を付属することができる。この辞書には注釈でも、対訳でも、コメントでも、URLでも入れられるので、紙の本とは違った奥ゆきを持たすことができる。
・ポケットPC版(Windows CE版)も同時に出荷
・ディック・ブラス副社長は担当からはずれる

●T-Time
http://www.voyager.co.jp
・.ttz、.html、.book縦書き読書ソフト。 日本のボイジャー社製。 早くからリフローに対応。
・文庫パブリで、角川書店、講談社、集英社、新潮社、文藝春秋などが採用
・2001年10月 ポケットPC対応版を提供開始

■■■イーブックの書店と取次■■■

●アマゾン
http://www.amazon.com/ebook
・対応フォーマット:Microsoft Reader、Adobe eBook、PDF、Pocket PC
・e-Doccumentが好調 「本」ではなく、企業の調査レポート、白書など。 PDFが多い

●バーンス・アンド・ノーベル
http://ebooks.barnesandnoble.com
・対応フォーマット:Microsoft Redar、Adobe eBook、Pocket PC(Reader)が登場 (Gemstarが消えた)

●文庫パブリ
http://www.paburi.com
・出版社が自主運営する電子書籍のオンライン書店
 角川書店、講談社、光文社、集英社、祥伝社、新潮社、中央公論新社、徳間書店、双葉社、文藝春秋、学習研究社
・2001年6月 2000点を突破

●PDA Book
http://www.pdabook.jp
・ポケットPCなど、PDAデバイス専用のeBook書店
・Music.co.jpが運営、ボイジャーと提携 T-Time系

●e文庫
http://www.ebunko.ne.jp
・平井和正(幻魔大戦、ウルフガイ)、横田順彌、豊田有恒、中島梓、林雅子(神の手)
・対応フォーマット: PDF、ポケットPC

●10daysbook
http://www.10daysbook.com
・ゲゲゲの鬼太郎、ルパン三世、ドカベン、はだしのゲン、サイボーグ009、永島慎二
・2001年3月 韓国のマンガを販売
・2001年11月 「ホーキング、未来を語る」をeBookで先行販売
・対応フォーマット: オリジナル(画像系)、Adobe eBook

●パピレス
http://www.papy.co.jp
・対応フォーマット: PDF、テキスト、Adobe eBookl、EBK、HTMLなど
・2001年12月現在 約7500点

●ライトニング・ソース
http://www.lightningsource.com
・米国大手取次イングラム社のeBook子会社
・eBookの保管、ダウンロード、オンデマンド出版を担当

●レシプロカル
http://www.reciprocal.com
・ソフトバンク(US)系のコンテンツ配信会社(eBook、ゲームソフト、ソフトなど)
・2001年11月 事業を停止 100名以上の社員を解雇
・September 11に続く、米国株式市場の低迷であえなく倒産 ⇒ 誰も買えない!

●ネットライブラリー
http://www.netlibrary.com
・200点/日でデジタル化、ベンチャーキャピタルが1億ドルの投資、テキサス大学図書館から大量受注、Palm用の http://www.peanutpress.com/ が大ヒット、保有コンテンツ3万点など、話題多数
・2001年11月倒産 ⇒ 学術情報最大手のOCLC(Online Computer Library Center)が購入

■■■海外出版社のイーブック対応■■■

●サイモン・アンド・シュースター
http://www.simonsays.com
・スティーブン・キング、スタートレック・シリーズなど
・対応フォーマット: Microsoft Reader、Adobe eBook

●ペンギン
http://www.penguin.co.uk
・2001年9月 イー・ペンギンというプロジェクト名で、200点を出版
・イギリスのピアソン系の大手出版社で、ペーパーバックスで有名
・ビルゲーツからヒットラーまで
・対応フォーマット: Microsoft Reader、Adobe eBook 価格は2〜5ポンド程度

●出版財閥: ピアソン、ベルテルスマンそしてビベンディ

・RandomHouse/Bertelsmann(独)
http://www.bertelsmann.com
 放送: RTL Group 独RTM、VOX、仏M6、英Channel 5、オランダRTL 4、ベルギー、ハンガリー
 出版: RandomHouse(米国) ⇒ Ballantine、Bantam Dell、Doubleday、Crown 辞書Webster
      Bertelsmann Springer(ドイツ) 70 PublishingHouse
 音楽: BMG ⇒ NapStar
 オンライン: BeCG(eCommerce Group) CDnow、BOL、Barnes&Noble.com、ドイツAOL

・Penguin/Pearson 30,000人、60ヶ国 (英)
http://www.pearson.com
 出版: Pearson Education ⇒ Printice Hall、Addison-Wesley、allyn&bacon/longman、
         Adobe Press、Cisco Press、Macmillan、QUE、SAMS
      The Penguin Group publishes ⇒ DK
 新聞: The Financial Times 
 通信: Reutersロイター通信社

・Vivendi/Universal (仏)
http://www.vivendi.com
 音楽: デッカ、グラモフォン、A&M、アイランド、ポリドール ⇒ MP3.com
 出版: Houghton Mifflin、Larousse、辞書系を集めている

■■■新しい動き■■■

●AOL TimeWarnerのiPublish
http://www.ipublish.com
・巨大企業GEのジャック・ウェルチ元会長の回顧録をeBookで出版
・AOLタイム・ワーナーの子会社で、出版社の機能をすべてインターネット上で実現
・2001年1月 旗揚げ
・2001年12月末日 消滅予定 社員30名

●OreillyのSafariBooks
http://safari.oreilly.com
・2001年9月 ピアソンのテクノロジー・グループ(アディソン・ウェスレイ、プレンティス・ホール、キュー、サムス、アドビ・プレス)と共同のプロジェクト
・毎月10ドル。 インターネット上の技術書を読む。 ポイント制(2ドル)。
・Microsoft Reader、Adobe eBookのようなダウンロード型ではなく、オンライン型
 コンテンツが一元管理されているので、改版や間違いの訂正も容易
・オライリーは、XML推進サイトxml.comなども運営、Unix関連書籍で台頭

■■■インターネット技術■■■

●Webサービス(XMLとSOAP)
http://www.est.co.jp/ks/pinfo/11ws.htm
・2001年 インターネット第三世代へ B2Bの基礎技術 サーバ間で機械が会話
・第一世代 1980年代〜 電子メール、ftp
 第二世代 1993年〜  ブラウザー(Mosaic)、HTML
 第三世代 2001年〜  Webサービス、XML
・サーバが関数(機能)を持つ SOAPというプロトコルでこの機能を利用する
・辞書サーバ間連携(複数サイトの串刺し検索)、書誌情報のサーバ配信

●Microsoft Producer
http://www.microsoft.com/windows/windowsmedia/technologies/producer.asp
・2001年12月 無料のオーサリングソフト、ダウンロード開始
・ストリーム・ビデオ+パワーポイント資料+HTML
・ストリーム型eLearningコースを手軽に作るためのツール
・ブラウザー(IE5.0)とMedia Playerがあれば見られる

●Starbucksの無線LAN
http://www.mobilestar.com
・IEEE 802.11bに対応 全米500ヶ所 最初の30分間は無料 時間無制限で$30/月
・モバイルスター社が運営
・Think Pad S30、VAIO SR など、無線LANカード内蔵PCが続々登場

●ソニー エア・ボード
http://www.sony.co.jp/sd/airboard
・IEEE 802.11bを使った無線インターネット、電子メール+テレビ デバイス
・128,000円 ⇒ 第二世代は98,000円
・10.4インチ液晶画面 SVGA バッテリー寿命40分 モニター:1.5Kg

●Nokia9210とHandSpring Treo
http://www.nokia.com/phones/9210
・電話+インターネット+電子メール+PIM
・ホットドッグ型 Symbian OS+Java+WAP、XHTML
・世界中で10億人が携帯電話を使用、2006年には15億人がモバイル・インターネットを利用
http://www.handspring.com/products/treo
・電話+インターネット+電子メール+PIM
・Palm OS しかし、手書き認識ではなくキーボード型
・2002年1月 モノクロ 160x160ドット 399ドル ボディーは黒 でもHandSpringですから・・・
・2002年4月 カラー 出荷予定

●ホームサーバ、400GBのHD
・家庭内LANの中核
・サーバはどこに入るか? パソコン、電話、テレビ、ビデオ、冷蔵庫、・・・
・2001年11月 ComdexでSONY安藤社長のキーノートスピーチで登場
 1TB(テラバイト、1000GB)、DVD460枚つまり映画460本
 ギガポケットからテラポケットへ
・2003年から、光ケーブル+ホームサーバで、本当のブロードバンド時代へ突入
 常時接続、しかしダウンロード型が主流となるか?
・ハードディスクは開発競争に突入 静かで大容量 60GB⇒二年後には400GBという予測も

■■■2002年はどうなる■■■

●日本語版 Microsoft Readerが登場
 Windows PC、ポケットPC

●タブレットPCが登場
 読書端末

●もっと常時接続、もっとブロードバンド、もっと無線

●複合製品が続々登場
 テレビ+インターネット、電子レンジ+インターネット、冷蔵庫+インターネット
 電話+電子メール、パソコン+HDビデオ、パソコン+テレビ

●NewsMLによるニュース配信

●電車で時たま、eBookを読んでいる人をみかける

●eBookは深く、静かに

from Dec. 18th 2001来訪者カウンター
Kazuo Shimokawa