電子書籍ケーススタディ 25
 郵便番号検索 =ぽすたん=
イースト株式会社 下川 和男

 先月号の年賀状当選番号検索サイト「大当たり」に続き、今月も郵便ネタをご紹介する。
 「ぽすたん」は、郵便番号の検索を行うWebサイトである。「大当たり」が、当選番号の表をインターネットで会話型にチェックできるサイトであるのに対し、「ぽすたん」は、「郵便番号簿」をインターネットに置き換えたものであるが、「大当たり」同様、様々な仕組みが入っている。

「ぽすたん」の機能
 郵便番号検索では、「郵次郎」(http://yuujirou.inac.co.jp/)、や郵政事業庁の郵便番号検索(http://search.post.yusei.go.jp/7zip/)、「郵便ねっと」(http://www.yu-bin.net/)などのサイトが有名あるが、どれも、実際にユーザとして使って、違和感を持っていた。
 何れのサイトも、先ず、都道府県名を入力しなければならない。郵政事業庁のサイトは、よく説明を読むと、都道府県の指定ナシでの検索が可能であるが、「都道府県名からの検索」、「郵便番号からの検索」、「住所のよみがなで検索」、「住所の一部からの検索」と4種類の検索方法があり、入力窓とリスト・ボックスが合計9個も並んでいる。
 これに対して、「ぽすたん」(http://www.postan.jp)は、Google(http://www.google.co.jp)やYahoo!(http://www.yahoo.co.jp)と同様、窓が一つだけで、ここに何でも良いから放り込む方式である。
 全角でも半角でも良いので、数字を入れると「郵便番号からの検索」を行うし、文字が入れば「住所の一部からの検索」となる。しかもGoogle同様、空白で区切って二つの単語を入れると、アンド検索を行うし、ひらがなの読みからも、高速に探してくれる。
 検索は、この連載で何度かご紹介したBTONIC(http://www.btonic.com)という、XMLドキュメントの全文検索エンジンを使用している。郵政事業庁がCSV(カンマ区切り)形式のデジタルデータで公開しているファイルを使い、XML形式に変換したものを、BTONICに取り込み、イーストのデータセンター(http://www.est.co.jp/idc)に置いたものである。

Webサービス機能
 「ぽすたん」は、このようなブラウザーを使った検索だけではなく、話題のWebサービスにも対応している。「Webサービスとは何か」(01年12月号)でご紹介したが、WebサイトからXMLデータを配信し、他のサーバやクライアント・パソコンがこれを受け取る仕組みである。
 「ぽすたん」ホームページの右下に「Webサービスの説明」というリンクがあるが、ここに、「Webサービス仕様」と「Windowsクライアント版」、「ブラウザー版」、「Office版」の各検索アプリケーションを紹介し、サンプルソースも公開している。
 「Webサービス仕様」は、SOAP(Simple Object Access Protocol、http://www.w3.org/TR/SOAP/)インタフェースや、WSDL(Web Services Description Language、http://www.w3.org/TR/wsdl)を載せており、誰でも、Visual Studio.NETなどの開発ツールを使って、「ぽすたん」サーバを検索することができる。
 「Windowsクライアント版 検索アプリ」は、インターネットに接続されたWindowsパソコンから、直接「ぽすたん」サーバを呼ぶためのソフトで、C#言語で記述されたサンプルソースも公開している。
 「ブラウザー版」は、「ぽすたん」をブラウザーで検索する際、サーバ上で動くソフトで、http://www.postan.jpの画面を作る基本部分のサンプルソースをC#で公開している。
 「Office版」は、Office XP Web Services Toolkit 2.0を使ったサンプルで、インターネットに接続されたパソコン上で、Excelの表に郵便番号を入力すると、住所を表示する仕組みである。
 つまり、郵便番号Webサービスの仕様とアクセスするためのサンプルを一挙に公開した。

「ぽすたん」開発チーム
 「ぽすたん」は、加藤、栗原、松本、金山という4人で開発した。加藤は、この連載では「Books.or.jp」(02年5月号)、「JiBOOKS」(03年3月号)、「信越放送」(01年9月号)などを開発したバリバリの技術者、栗原も「NewsBOX」(02年9月号)などを開発した、気鋭の技術者である。
 松本と金山は、進捗管理やサーバ管理、デザインなどを担当しているが、以前、ソフトウェアの開発経験があり、プログラミングの基本知識は持っている。
 プロジェクトは、加藤から、松本、金山への講義からスタートした。Visual Studio.NETの使い方、C#言語でのプログラミング方法、SOAP、WSDLそしてWebサービスとは何か、を半日ほどで理解してもらった。
 栗原が「Webサービス仕様」と「Office版」を数日で開発し、松本が「Windowsクライアント版」、金山が「ブラウザー版」とデザインやユーザインタフェースを含む一般公開版を、通常の仕事を合間で、正味一週間ほどで開発した。
 現役の栗原が数日なのは判るが、松本、金山の一週間には驚いた。C#という言語も書きやすいようだし、WSDLなど、お呪いと思って使えば、Webサービス型のプログラム開発は簡単に行えるようだ。


 以上のように、A4判500頁の郵便番号簿「ぽすたるガイド」をWeb化した「ぽすたん」は、様々なWebサービス機能を持っているが、今後、企業を特定する郵便番号への対応、データ更新と差分情報の配信サービスなど、巨大住所データベースを所有する法人向けのサービスを強化する予定である。

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Kazuo Shimokawa [EAST Co., Ltd.]