旅の記録 Seybold Seminars 1999.08.29-09.02
 eBook at Seybold 99

 以下は、Microsoft Readerの発表の直後の29日夜にHTMLを作成し、電子出版関連の方に公開したものです。このURLは、一般に公開しています。ご意見、間違いのご指摘などは、shimokawa@est.co.jpまで、お願いします。

 Dick Brassさんのpastfutureも翻訳しました。特にFutureは大変興味深いです。



Seybold Seminars 1999 08.29

 DTP(Desk Top Publishing)をApple、Adobe、今はなきAldusとともに立ち上げた事で有名な、Seyboldの西海岸セミナーが、8月29日から、サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターで開催された。
 セミナーのタイトルは「21th Century Publishing」。キーノートスピーチのトップバッターが、マイクロソフト社でのeBookの責任者である、Dick Brassということもあり、電子書籍関連の展示がや発表がいくつか行なわれる。「On PaperからOn Screenへ」言い直せば「紙から液晶へ」の壮大なeBookプロジェクトは、「21世紀の出版」を標榜するSeyboldとしては恰好のテーマである。
 Jonathan Seybold氏が主催し、19年の歴史を持つ、Seybold Seminarsも、電算写植→DTP→Web Publishingと、時代と共にテーマを変えてきたが、今年がeBook元年なのかもしれない。Seybold氏の姿が見られなくなって残念だが、参加者30000人、出展社300人と規模も程よく、勉強しやすいセミナーである。

東にSONY METREON北館の入り口西はSFMOMA(近代美術館)


Dick Brassのキーノート・スピーチ 08.29

 初日の朝8時半からキーノートが開始された。といっても、展示会は明日からで、今日は前座的に1000人規模のキーノートである。明日は真打のSteve Jobs登場なので、10000人の入りとなるであろう。
 しかし、中身はDick Brassの方が面白いに決まっている。過去の人であるJobsが、兎(Power PC)と亀(Pentium)で聴衆を沸すのは目に見えているが、Brassは現在進行形の巨大プロジェクトの責任者なのである。
 この場で、Open eBookの仕様書 第一版を発表しないことは、事前に判っていたが、噂の「Microsoft Reader」が発表された。紹介ビデオのBGMは日本人の耳になじむスコットランドの曲である。Clear Typeの責任者がBill Hillというスコットランド人でなので、何かとスコットランド色が出てくる。

 資料の中に、紙とCD-ROMの百科事典の販売本数グラフがあり、紙が衰退しCD-ROMが大きく伸びていたが。「百科事典は、CD-ROMで活き返った」といっていたが、寡占が進んだだけかも知れない。そう言えば、Microsoft Encartaの「紙版」がパソコンショップで売られていた。版元は良く知らない会社だったが、44.99ドルだった。結構、売れるかもしれない。
 Brassの20分ほどの持ち時間の中で、1455年のグーテンベルグから2000年のeBookまでの「past」と、2000年から2020年までの非公式な「future」が秀逸だった。キーノートが終了後、プレスルームに駆け込み、調べたら、しっかりWebに載っていたので、この通りリンクできた。その内、日本語で雑誌に掲載されるだろうが、ご一読を!
 Readerは、Clear Typeを搭載し、秋からβを開始し、来年早々には出荷するとの事。Clear Typeの漢字対応という基本技術の動向が不明なので、30日ルール(Microsoft製品の日米の出荷ギャップ)が適用されるかどうか判らないが、早く漢字Readerを使ってみたい。Open eBookの日本語仕様は、イーストなどから数ヶ月前に提案済みなので、仕様通りのテキストを作れば、漢字が表示されるハズである。

Open Systemプロテクトできない
Closed System売りにくい

 という本質的な問題にも言及していた。コピープロテクトされ読書端末を限定した電子書籍が普及するかどうか、Microsoft Reader、Rocket eBook、そしてこのSeyboldで読書端末を正式に発表するSoftBookの今後に注目したい。

 Rocket eBookのタイトルが現在1010冊、Brassは2000年の出荷後1年以内に100万冊といっていたが、これは、既存のHTMLを含めた数字であろう。Open eBookはHTMLのサブセットなので、まとまった単位のHTMLがあれば、素人が手を加えて、Open eBookコンテンツに仕上げる事ができる。編集されていない、個人のコンテンツを含めなければ、100万冊にはならない。
 ベンチャー企業が、数千冊程度の縄張りで読書端末を競うのは、ビジネスモデルとして解が見つからない。OpenとCloseの狭間で、eBookは試行錯誤を繰り返しながら育っていくのであろう。
 スピーチの後、Q&Aで、「Readerは無料か?」という質問が出て、場内大爆笑。Internet Explorerや最近のMedia Playerなど、無料配布が定着してきたが、Brassさん大きな声で「販売も行なうよ!」と答えていた。

 既存の出版物を電子化するのではなく、ホームページの体裁を整えて電子書籍として販売するケースも、これから増えてくると思われる。それを見越して、1年ほど前に自分でも「ビル・ゲーツに囲まれて」という電子書籍を、ISBN付きで作ってみた。
 また、たまたまサーフィンしていて見つけたのだが「Wood Stock 99 写真集」などは、立派な電子出版物だと思う。

 


フリーメールと漢字表示 08.29

 プレスルームには、パソコンが10数台置いてある。早速、Microsoft、Nuvo MediaSoftBookなどをサーフィンして、情報を収集したが、日本のサイトを除いてみようと、「www.goo.ne.jp」と打ち込んだら、「日本語フォントをインストールしますか?」と英語で聞いてきた。「えッ」と思ったのもつかの間、3.0MBくらいだったのでOKボタンを押したら、10秒くらいで日本語でgooのお馴染みの画面が表示された。
 Internet ExplorerのMultilingual Kitは知っていたが、これは漢字入力も行なえるので、確か30MB以上である。漢字を表示するだけなら、一書体のフォントで充分なので、3MBなのだろう。
 これはIE5の機能なのであろうか? MacのIE4.0で「www.est.co.jp」とやったら、文字化け画面が表示された。
 後出のMac版Windows Media PlayerでのマシンID取得の問題や、このような漢字フォント表示など、OSの核の部分が絡んでくると、「WindowsとMacもブラウザー環境では同一マシン」、言いかえると「Javaでブラウザーアプリを作れば世界は丸くおさまる」という最近の風潮も、一皮むけば矛盾が出てくる。
 なぜ、gooを見たかというと、いろいろサーフィンしたURLを、メモとして自分宛てにメールしようと思ったからである。gooのフリーメールは、重宝している。email.com、Micorosft、msnのHotMail、Yahoo! Mailなどフリーメールは、スパムメールの温床にもなっているが、何でもアリのインターネットらしいサービスで気に入っている。

 08.30 漢字フォントをインストールしたマシンでこのページを開けたら、文字化けしていた。metaタグでcharset=x-sjisを入れなければ!


Steve Jobsのキーノート 08.30

 29日の発言を検証しよう。「10000人」は見事にアタリ!。モスコーニ最大の会議室が満員である。
 「内容が無い」は大きくハズレ。G4チップとそれを搭載したMac G4が発表された。Macのことはサッパリわからないが、この噂が流れたせいか、立ち見も出ていた。
 「兎と亀」はアタリ。G4だから当たり前だが、Adobe PhotoShopや今日発表されたQuick Time TVを使った画面比較を再三行なっていた。
会場への長蛇の列Jobsは髭面QT TVの画面(Star Wars)

 ここで発表された製品は、これから数ヶ月間パソコン雑誌をにぎわすし、細かい仕様なども紹介されるので、ここでは会場の雰囲気をや、プレス発表されなかった事をご紹介する。
 Jobsは話しが上手いが、聴衆も聞き上手で、良いタイミングで拍手する。拍手が多かったのは、以下の場面であった。

・Airportの発表
 150フィート(約46メートル)をカバーする無線サーバである。G4は事前に知っていたようだが、Airportには驚いたようだ。USBと10BASEの端子も付いている。45メートルなので技術的にBlueToothではない。政治的にもAppleがIntelの技術を使う事はありえない。
 09.10 プレスリリースを見たら、AT&T(ベル研)系のLucent Technologies社の技術と書いてある。

・Mac OS 9でのApple ScriptのTCP/IP対応
 「OSとアプリの動作を記述するスクリプト言語」という機能(Windows98から装備された、Windows Scripting Hostと同等のもの)だが、これが、インターネット経由で使えるとの事。

・何より拍手が続いたのが、Mac G4の出荷時期と価格
 400MHz、450MHz、500MHzの3モデルがあるが、最初は出荷時期の欄に、すべて「January」と表示される。Jobsが、「遅いよ」と言うと、400MHzは「Today」、450MHzは「September」、500MHzは「October」と表示が代わる。そして、価格が表示されると、歓声と拍手が場内に鳴り響いた。400MHzは1599ドル、500MHzは、RAM 256MB、HD 27GB、DVD-RAMが付いて3499ドルである。

・G4の発表
 ステージに置いてあった茶色の箱をさっと開けると、そこから銀色に輝くG4が登場した。形はG3と同じだが、スケルトンではない。ボディーは白と薄いグレー、ハンドル部分は透明だが銀色にも見える。ここでまた、大歓声。ホテルに戻ったら、CNNでもこの場面を繰り返し放送していた。

 ストリーム・ビデオをサポートしたQuick Time TVも発表されたが、これでReal PlayerMedia Player、QT TVの三つ巴の戦いとなり、混乱が続くことになる。ユーザも開発者にも困った状況である。
 パソコン本体は、以下のようなラインナップとなる。

ConsumerProfessional
DeskTopiMacPower Mac G3→G4
PortableiBookPowerBook
・iMac
 全世界で200万台を出荷し、米国では90%がインターネットに繋いでいると言っていた。Internet Readyを強調したパソコンだが、90%は驚異的な数字である。また、33%が初めてのパソコンと購入したとの事。
iBook
 9月に出荷するが、14万台の受注を抱えており、特に日本からの注文が多いと言っていた。
G4
 128bitのCPUを持ち、スーパーコンピュータに近い演算速度を強調していた。Pentium IIIより3倍早いGiga Flopsマシン、PhotoShopマシンと言っている。あまり、PhotoShopを引合に出すと、PhotoShopは何で遅いんだ!、何で資源をいっぱい使うのだ!、Adobeと矛先が向けられるかもしれない。
・PowerBook
 バッテリーが5時間、DVD-ROM付きと強調していた。

 Appleは、OSとCPUと本体が一環デザインできる唯一のコンピュータメーカーとして、完全に息を吹き返したようである。
 最後に、オッと忘れていた、と言いながら、ステージの奥から机を持ち出した。そこには、G4のお披露目と同じような、茶色のカバーが被せてある。サッと開けると、強大な液晶ディスプレーが現れた。22インチ、1600×1024の横長である。名前も「Cinema Display」。JobsはPixarの社長も兼務しているので、大きな画面が欲しかったようである。価格は、3999ドル。前出のG4 500MHzよりも高い。これには、ブーイングこそおこらなかったが、場内からため息が漏れていた。
 その後、展示会場で実物を目の当たりにしたが、これなら、40万円払うMacユーザは多いと実感した。机と同じ大きさで仕事ができるのだから・・・
 Cinema Displayの出現で、Macユーザが差別化されるような気がする。持てる者は社会的地位まで向上し、持たざる者は劣等感にさいなまれるような、社会現象がおこるような気がする。そんな、罪作りなディスプレイである。
 余談だが、青いiMacが出たときに、次はカラーバリエーションだなと思った。案の定5色が登場したが、これは、Rolling Stonesの「She is a Rainbow」の広告とマッチして、売上を伸ばした。それでは、iMacの次の一手を予測してみよう。金や銀のラメだと思っている。もっと派手ないMacである。広告は勿論、Keith Richardsが、けだるく歌う「You Got The Silver」!

Airportの説明白と銀のG4Pentium IIIとG4の性能比較

巨大なCinema Display
顔二つ分以上
Appleブース G4だらけ


展示会場

展示会場入り口メインセミナー会場展示場は地下


Soft Book

 $15Mの増資 ノキアも出資
 Wordからの変換ツール
 Roger HeinenがVPとして参加している。Appleのソフトウェア開発で名を馳せた人で、その後、Microsoftに移り、データベースや開発ツールの責任者だった。MicrosoftのPDCやTech Edでは、
 Glassbook PC Reader のβ公開ももうすぐ始まるようで、参加を募集している。
EveryBook
http://www.1stbooks.com
 9月1日にプレスリリースが飛び込んできたAdobeパートナーパビリオンにも出展はしていない。
マイクロソフトの隣り出荷OK説明も人だかり


GlassBookとEvery Book

 Adobeのパートナーパビリオンに並んで展示。GlassBookはプレスリリースを発表。
Glass Book見開きのEvery Book(試作機)


eBookの書店は何処?

 PublishingOnline.com と eCampus.com


Digital Rights Management

 暗号ファイルと鍵方式に統一か?
 Microsoft Media Server
 XeroxとAdobeがPDFのセキュリティー技術を発表

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