Windows HeartBeat #13 (1994年9月)
こんなノートが欲しい(中)

 ノート型パソコンをパーツごとに見ていこう。 パソコンの評価をしているつもりはなく、単に個人の嗜好を述べているので、お間違いなきよう。

CPU、メモリ、ハードディスク
 速くて、多ければそれに越したことはない。 SL拡張の低消費電力、3.3Vチップが多数出てきている。 486DXの33MHz、DX2の40MHz、50MHz、そしてDX4の75MHzと続々速いのがインテルから出荷されている。 メモリも、当り前だが多い方がよい。 私の愛機は標準の4MBに8MB加えて、12MBで使っているが、Word、Excel、PageMaker程度であれば、これで充分である。
 ハードディスクも多いほど良い。 ConturaAeroは最大240MB、LTE Eliteは510MBもある。 現在、210MBをDoubleSpaceで360MB程度に広げて使っているが、残りが40MBしかない。 デジタルビデオのデータなどすぐに10MBくらい使うので、500MB以上は欲しい。 アラン・ケイが1960年代に提唱し、パーソナルコンピュータのコンセプトとなった、「ダイナブック」には、特にハードウェアについての規定はされていない。 しかし、「個人で管理できる情報をすべて入れる大きさ」となっており、10数年前、このサイズは100MBであると解説されていた。
 巨大に膨れたアプリケーションソフトや、当時、思いもつかなかったフルカラー・グラフィックス、デジタルビデオなどのおかげで、個人が管理するデータの量は、1GBでも不足しそうである。

フロッピィディスク
 フロッピィドライブの有無で、ノート型、サブノート型と呼ぶようであるが、外付けか内蔵かは、個人的にはどちらでもかまわない。 ノートが重厚長大で3kg、サブノートが軽薄短小で1.8kgとなるのであれば、サブノートをとらざるを得ない。 東芝がDynaBookSSで「フロッピィ内蔵サブノート」を出したので、サブノートの定義は曖昧になってきた。 日本でも社内LANが普及してきたので、来年あたりからは、フロッピィなしが主流になるかもしれない。 アップルのPowerBook500シリーズも、次はフロッピィがオプションになるとのことだし、フロッピィの使用頻度は着実に下がっている。

画面
 これが、いちばん困っている部分である。 Windowsの画面は、机に見立てて構成されており「デスク・トップ・メタファ」と呼ばれているが、今さら640x480ドットの狭くて窮窟な机を使うのはつらい。 まるで小学校の机に座らされているような気になってくる。 携帯端末用のOSであるWinPadは、現状の半分の液晶画面を使用するので、「デスク・トップ・メタファ」を捨て、「ノート・ブック・メタファ」に代えて、複数ウィンドウをやめてしまった。 現状のノートパソコンの画面では、複数ウィンドウを見ながらの仕事は行えない。 だから、会社に帰ったら拡張ステーションにつないで、外部モニタ端子でハイレゾ・ディスプレイへとなるのであろうが、これも厄介である。
 ノート型ワークステーションでは、10.4インチの1024x786カラー液晶も登場している。 パソコンでは三菱apricotの10インチ、1024x768モノクロ16階調が発売された。 秋のコムデックスには、ハイレゾカラーノートが多数登場するであろう。 その前に800x600のカラー液晶が欲しいのだが、あまり見かけない。 10.4インチでハイレゾだと文字は小さくて見づらくなるが、800x600なら、窓も複数開けられるし、製造コストも安いはずである。
 現状のノートパソコンには、7.8から10.4インチの画面がついているが、ほとんどの機種は、裏蓋の画面のまわりが空きすぎている。 ノートパソコンは、全面に部品が詰まってなければならない。 ノート型なら10.4インチ、サブノートでも8.4インチ程度の蓋一面の画面であって欲しい。 強い思想を持ったサブノート、ヒューレット・パッカードのOmniBookには、蓋からはみ出さんばかりの9インチモノクロ画面がついている。
 もう、カラーでなければ使う気にはならない。 それも、反応速度が速く高精細なTFT型液晶から、マウスが移動中に見えなくなるサブマリン現象が発生するSTN型液晶への買い替えは難しい。 TFTが安くなれば良いのだが。

キーボード
 各キーの大きさ(キースペース)は、標準の19mmでなければならない。 1mmでも狭いと打ち難い。 世界最小のカラーノートThinkPad230は15.8mm、DynaBookSSが17mm、ConturaAeroが17.8mm、SSとAeroは右側の特殊文字キーをさらに狭めるなどの工夫をしているが、標準キーとの使い心地の差は大きい。
 ストロークの深さは3mmは欲しい。 これより浅いといくら慣れても打ちづらい。 ノートの3mmの深さに慣れると、標準キーボードが深すぎて指が拍子抜けしてしまう。
 キータッチや、キーの色、手触り、ストロークの深さなどは、ThinkPad750が好みである。 さずが旧社名インターナショナル・ビジネス・マシンというだけのことはある。 タイプライター以来のキーボードに対するこだわりが感じられる。
 キーボードの位置も問題である。 アップルPowerBookと同様に、DynaBookSSがキーボードを上にあげて手置きを付けて注目されたが、この方が飛行機の機内などの狭い場所でも使いやすい。 
 キーレイアウトにも要望がある。 頻繁に使用するカーソルキーは、DyanaBookのように、JISキー配列の中に整然と入っているより、Contura、ThinkPadのように、右下に飛び出ている方が使いやすい。 Enterキーも右端に鎮座してもらいたい。 DynaBookやOmniBookのように、そのまた右に制御キーだ並んでいるとミスタッチの原因となる。

バッテリー
 現在の倍、5〜7時間は連続で使いたい。 まる一日分である。 これ以上は必要ないが、2時間では、バッテリー寿命が気になって、セミナー会場などに持ち込むのを手控えてしまう。
 省電力の仕組みとして、ハイバネーションとリジュームの違いもある。 コンパック社の推進するハイバネーション機能と東芝のリジューム機能を比べると、電力が豊かで電源スイッチが付いていない蛍光灯がある国と、すぐに電気を切る国の違いのようにも感じる。

ボディー
 初期の名器、東芝DynaBookは鉄製であった。 飛行機に乗ると必ず危険物チェックに引っかかり、稼働確認をさせられた。 使い込むと黒い塗装が剥がれていき、銀色に光りだす。 数年前、銀色のDynaBookでカッコ良さ競っている連中がいた。
 強化プラスチックの筺体は、その点味気ない。 愛機Conturaも、1年間酷使しても新品同様である。 もっとも、光に当てると無数の傷が見えるが。
 色は淡い方がよい。 現状は黒が主流だが、重量感はかえってマイナス要因である。 LTE
EliteのベージュやDynaBookのグレーがスポーティーでカジュアルに感じる。 ノートパソコンを小脇に抱え、山の手線で商談へといきたいのである。 それにしても、98ノートは何であんな暗いグレーにしたのであろうか。 デジタルブックを含め、もっと明るい色に変更して欲しい。
 ThinkPadは、小学生の筆箱のように、ボディーに名前を記入するスペースが入ある。 みんながThinkPadを使えば、たしかに見分けがつかない。 IBMらしい強気のアイデアである。 ボディーの手触りではThinkPad750が好みである。 柔らかさがあり、手にピタリと納まって、すべりにくい。
 横幅を小さくすると自ずとキーも狭くなってしまうが、ボディーを小さくする意味はあまりないと思う。 サブノートでもOmniBookやエプソンのEndeavor
NT-500などフルキーボードで横長ボディーのものが増えてきた。 Endeavorは小さな筺体にDX4の75MHzという強力なエンジンを積んでいる。


#14「こんなノートが欲しい(下)」