旅の記録 1992年9月13日〜16日 Huston
Compaq INNOVATE '93

 コンパック社が9月13日から16日まで、本社ヒューストンのジョージ・R・ブラウン・コンベンションセンターで開催したINNOVATE93に参加したので、報告する。 このサミットは、毎年、米国内の開発者を対象にして開催していた技術コンファレンスを拡大し、世界規模で参加を募った最初の催しである。 開発者向け以外に、販売者向け、大手ユーザ向けそしてプレス用のセミナーが並行して開催された。 会場には、イタリア語やフランス語も飛び交い、5000人もの人で溢れていた。
 テクノロジーセミナーは600ドルであるが、セミナー代を払い、飛行機に乗って、世界中から5000人が集まるだけの力を、今のコンパックは持っている。 あまり宣伝しなかったせいか、日本からの参加者は、以外と少なく、30名程度であった。 技術セミナーのレベルや、今後のコンパックの業界での地位を考えると、来年は日本から業者のツアーが出るかもしれない。
 INNOVATEは、革新、刷新という意味であるが、古いコンピュータから新しいコンピュータ環境への刷新を目指す、コンパックの意気込みを表わしたものである。
 キーノートスピーチ、技術セミナー、展示会で構成され、初日には、新製品の発表、2日目にはモービルコンピュータ向け基本技術の共同開発「Mobile Companion」も発表された。

新製品の紹介

 9月13日、10種類以上の新製品や新サービスが発表された。 メインは、小さなペンパソコンとタワー型のサーバモデルである。 仕様は一覧表を見ていただきたい。

Presario
 新製品ではないが、8月26日に発表された最新機種である。 98マルチやMac520同様、CRT一体型で、486SXに4MBのメモリそして200MBのハードディスクやファックスモデムまで入っている。 ソフトはDOS6.0にWindows3.1、そして表計算、ワープロなどの統合ソフトPFS:Works、Fax送受信ツールMaxFax、個人会計のQuickenなど、とりあえず使うには充分のソフトがバンドルされている。 これが15万円弱の値段で店頭に並び、飛ぶように売れている。 日本で出すには、FAXやバンドルソフトなど、日本対応で解決しなければ問題がありそうだ。 日本には、CD-ROM付きの手頃なDOS/V機がないので、これにCD-ROMドライブを搭載すればFM-Towns、98マルチ、Mac520と同じ教育市場そして一般家庭が狙える。 次機種はCD-ROM搭載となるのが目に見えている機種なので、これに日本向けにメモリを4MB加えて、20万円台にできればヒット間違いなしである。
 コンパックの工場見学の際にも、配送センターに、山積みされていた。 コンシューマ向け製品のためパッケージも従来の淡い黄色のモノトーンではなく、カラー印刷されている。 おもちゃの量販店「トイザ"ら"ス」に、プラモデルや人形のパッケージと一緒に並べても良いような、カラフルなものに変えられている。 パッケージの上に丸いシールが貼られ、「Prodigy」付きとある。 話題のビジュアルパソコン通信のスターター・キットである。
 パソコン誌には広告を出していない。 スポーツ誌や婦人雑誌などの一般誌広告やテレビコマーシャルで、大量販売を行なっている。 Mac520は米国では教育市場のみで、一般には販売されていないので、一体型のホームパソコンとして市場を独占する勢いである。


Concerto
 通常のノートパソコンを、キーボードと画面部に分解できるように工夫した製品である。 CPUやハードディスクなどの本体部分は、通常のノートパソコンではキーボードの下に入っているが、これを液晶画面側に入れたと思えばよい。 キーボードは薄い板になっており、取り外しできる。 さわった感じは、キー・ストロークも深いし、通常のノート型と遜色ない仕上がりである。 大きさと重さは、従来のノート型パソコンとほぼ同じA4大で3Kg弱。
 アミーナイフのように、限られたスペースに豊富な機能を盛り込んでいる。 PCMCIAのスロットや外部バス、シリアルポートなど、スライド式の扉を開けるといろんなものが現われる。
 画面部分には取っ手がついており、使用する際には、これが立てかける足となる。 キーボードはまさしくプラグ・アンド・プレイで取り外しが自由。 周辺装置をつなぐ都度、DOSから立ちあげ直す手間がなくなり使いやすい。 面白がって何度も付けたり外したり遊んでしまった。
 これだけの仕組みを盛り込むと、プラスチックの筺体の破損が心配になる。 繊細で几帳面な日本人なら大丈夫だが、米国人は物の扱いが乱暴である。 ヘッドフォン・ステレオも米国仕様の製品は日本の物より20%くらい大きく堅牢にできている。 もっとも、コンパックのデザイナーから、Concertoとヘッドフォン・ステレオではユーザの知的レベルが違いますと反論されそうだが。
 ペンの使い勝手はすばらしい。 説明資料に「ペンはマウスより強し」と粋な見出しが付いていたが、まさに実感。 オブジェクト指向操作の原点のような気がする。 Newtonの小さなペンに比べ、こちらは太めで握りやすい。
 ペンパソコンが普及すれば、ペンそのものが重視されるであろう。 「シャーボ・プラス」というシャープペン、ボールペン、そしてデジタルペンの3モード対応のペンが出現するかもしれないし、10万円の「蒔き絵デジタルペン for Concerto」などという商品が販売される時代が来るかもしれない。 ペンの「重さ、太さ、書き味」は、キーボードの「サイズやストローク、強さ」以上に重要な、使いやすさの要件である。
 肝心な電池寿命は、3.5から4時間とカタログに記載されている。 スタンバイモードが7日間持続するなど、パワーマネージメントは工夫されている。
 ソフトウェアもインク社とスレート社というペンパソコンソフトの雄、2社の製品をバンドルしている。 インクはペン専用のメモ帳ソフト「ノートテイカー」のWindows for Pen版、そして、スレートは「ペンパワー」という、Excelをペンで使いやすくする、新製品のアドインツールを提供している。
 最近流行のペンOSは、PenPoint、NewtonOS、GeoWorks、Windows for Penなど群雄割拠の状態にある。 Windows for Penは、Windowsアプリケーションが稼働してしまうので、ペンに本格対応したソフトの品揃えが一歩遅れていた。 Concertoの登場で、他のPenOSと肩をならべることができたようである。 これもコンパックとマイクロソフトの提携強化の現われである。
 Concertoは、東芝Dynanoteなどの「ペンパソコン+キーボード」の考え方を一歩進めた製品だが、ペンでもキーボードでも、という用途がどれくらいあるのか分からない。 ノート型とペン型のどちらにも属さず、販売するターゲットを絞り込みにくいかもしれない。 「ペンパソコン+キーボード」は、Windows for Penの思想にはピッタリ合っているが。


ProLiant
 SystemPro、ProSigniaに続く、サーバ最上位のシリーズである。1000、2000、4000の3モデルが発表された。 1000は486の66MHzで小規模ネットワーク向けのエントリーモデル。 2000はコンパックご自慢のCPU、メモリ、周辺装置のアクセス速度を均一化して処理速度を高速にする機構であるTriFlexを採用した中規模サーバ。 4000はPentiumの66MHzが4つ入るスーパーサーバとなっている。 2000、4000は、新登場したフルスペクトラム・フォルト・マネージメントというマルチタスクのフォルト・トレラント管理機構を採用している。
 サーバへの繁雑なインストール作業を単純化する、スマート・スタートというパッケージソフトも提供される。 これは、ネットワークOSをCD-ROMで提供し、ネットワークのハードウェア環境をチェックしながら最適なシステムをインストールするツールである。
 ネットワークOSとしては、NetWare3.11,3.12,4.01、WindowsNT+AdvancedServer、SCO UNIX4.2の3種類が選択できる。
 新製品が発表された13日に、本社を見学したが、PorLiantの大きな箱がたくさん積み上げられていた。 即日出荷できる体制になっている。 パッケージの箱が従来の薄い黄色ではなく、淡い紫色に変更されている。


ProLiner4/33s、DeskPro486s/33M
 2つのデスクトップ製品も発表されたが、これは、486SXの33MHzチップを使用した、低価格パソコンである。 一覧表のとおりのスペックで定価1249ドル。 日本では落ち着いた感のあるパソコンの価格戦争が、米国では限りなく続いている。

Compaq 新製品一覧
ConcertoPresalio425ProLinea4/33sProLiant
CPU486/25,33486SX/25486SX/33Pentium,486/66
メモリ4MB4MB4MB
ハードディスク120/250MB200MB120MBDrive bays x5
フロッピィディスク3.5"x13.5"x13.5"x13.5"x1,CD-ROMx1
ディスプレイ9.5"モノクロ液晶14"(1024x768)
入力装置Pen,KeyBoardKeyBoard,MouseKeyBoard,MouseKeyBoard,Mouse
周辺デバイスFax/ModemISA x3
PCACIA typeIIx2Joystick端子Drive bays x3Drive bays x5
OSWindows for PenWindowsWindowsNetWare,NT,SCOunix
バンドルソフトInk NoteTakerPFS:WindowsWorks(SmartStart)
SLATE PenPowerMaxFax,Prodigy
AmericaOnline
Quicken
SymantecGames
価格$2499$1399$1249から$6000から

キーノートスピーチ

コンパック社長 エッカード・ファイファー  コンベンション・センターの3方向に分かれた広い客席には、3000名以上のコンパックコンピュータの販売関係者、技術者が集い、コンパック社長のエッカード・ファイファーは、まずコンピュータの将来像をビデオで説明した。
 コンピュータ化された新聞、ハンディー・トーキーに液晶が付いたようなパーソナルコミュニケーター、自動翻訳など、AT&Tやアップルと同じ未来を見せてくれた。 新聞はなぜかヘラルド・トリビューン。
 新しいハードウェア技術による、新しいコンピュータの時代が始まった。 現在360tpi(サーバーでのトランザクションの処理スピードの単位)、ディスク50〜100ギガバイト、20,000ドルのサーバーマシンが数年後には、2000tpi、0.5〜1.0テラバイトで価格は15,000ドルに下がる。 ホームコンピュータは500ドル以下のなると予測している。
 今、革命の時である。 3つの革命つまり、市場の革命、顧客の革命、社内の革命が起きている。 市場の革命は、メインフレームからPCへのライトサイジングとオープン化、そして横割りの分業化したコンピュータ業界の出現である。 顧客の革命は、大企業や政府、学校などがGrassHouse(汎用機)からクライアント・サーバー型の移行である。 社内の革命は、この2年間でコンパック内部の事業を見直し、顧客への対応を迅速にした。 この1年間で200機種に及ぶ製品を発表し、出荷量を4倍そして2倍のマーケットを獲得した。
 情報社会のリーディング・カンパニーとして、ユーザ・ニーズを先取りし、多様なコンピュータ・プラットフォームを提供していく。 1996年には、アップル・コンピュータ、IBMを抜いて、世界一のシェアを目指す、とやる気充分である。
 アップル、ジョン・スカリーの「Knowledge Navigator」、マイクロソフト、ビル・ゲーツの「Information At Your Fingertips」、インテル、アンドリュー・グローブの「Micro2000」と、コンセプトが流行っているが、来年あたり、彼もコンセプトを口走らざるを得ないかもしれない。
 アップルのスカリーそしてIBMのエイカーズ、2人のジョンが去り、コンピュータメーカのスターがいなくなってしまった。 カリスマ性のまったくない、まじめなファイファーがコンピュータ業界の代表に押し上げられた感がある。


マイクロソフト上級副社長 スティーブ・バルマー
 出荷したばかりのNTそしてアドバンスト・サーバーから話が始まった。 NTには、現在150種類のアプリケーションが存在し、今も1日に3本のペースでパッケージソフトができている、と語り、具体的なパッケージ名を上げた。 ダン・アンド・ブラッドリーの会計ソフト、イングレスのデータベース、そしてインターグラフ、メディアビジョン、オートデスクなど、大物ソフトが並んでいる。
 アドバンスト・サーバーでは、新しい価格体系を作りあげた。 従来のミニコン+データベースに比べ、ProLiant+NT+SQLサーバーで価格が10分の1に下がったと豪語している。 NTアドバンスト・サーバーはすでに、200サイトで稼働中。 ペンゾイル、エアーフランスなどの大企業が主体である。
 これからは、エンドユーザ言語VBA(VisualBasic for Applications)や、そのベースとなるMicrosoft Office4.0そして、マイクロソフト社のネットワーク技術者認定制度など、すそ野を広げることに努力すると言っていた。
 AT-Workや、コンシューマ・テクノロジー分野では、初心者向けのウィンドウズ・ユーザインタフェースの提供や、"さいふPC"、ケーブルテレビのチューナーボックス、そしてデジタル・ハイウェイなどに力を入れるとのこと。
 Chicago、Cairoについては、Cairoがオブジェクト指向プログラミングの成果として、デスクトップからスーパー・サーバーなど広範なニーズの対応できることや、オブジェクト指向のユーザインタフェース、分散された情報へのアクセス、そして最新のハードウェア技術の進歩をベースにして、開発を進めていると説明していた。

インテル社長 アンドリュー・グローブ
 ファイファーの紹介で登場し、彼から新製品のペンパソコンConcertoをプレゼントされた後、スピーチが始まった。 まず、最近、力を入れているネットワークボード、EtherExpressのPCMCIAカード版をポケットから取り出し、Concertoに差し込む。 するとNetWareLiteがすぐにそれを認識する様が、大画面に写し出された。 プラグ・アンド・プレイである。
 8年前の386の採用を感謝し、それ以来の友好な関係が、プラグ・アンド・プレイそして、モービル・コンパニオンの技術提携につながっていると話した。
 コンピュータ業界の産業構造の変化、つまり縦割りから、細分化された横割りへの変遷や、Micro2000構想、そして、CPU以外にこんなこともやっていますよと、ビデオ圧縮技術Indeoやネットワーク関連技術を紹介した。 Indeoのデモでは、ProLiant、DeskPro、Presarioで、Concertoをプレゼントされた場面のデジタルビデオをVideo for Windowsを使って再生し、CPU速度が違っても、同じ様に再生されますと紹介していた。 Presarioのオーバードライブプロセッサの説明では、デジタルビデオでコンピュータの筺体を壊す場面を映し出し、「これは、アップルが失敗したPowerPCを壊しているところだ」とジョークを言い、会場は湧き上がった。

コンファレンス

 コンファレンスは、NetWareそしてクライアント・サーバコンピューティングのセミナーが目についた。 100を越えるセッションのなかで、モービルコンピューティング系のいくつかのセミナーとマイクロソフトの開発ツールのセミナーに参加した。 その一部を紹介する。

マイクロソフトの開発ツール紹介
 データベースおよび開発ツール部門の若いマーケティング担当者がひとりで100分間話してくれたが、中身の濃いセミナーであった。 まずボスである、上級副社長Roger Heinenの写真と彼のお言葉を画面に写し出し、次に、この部門が担当する製品を紹介してくれた。 SQLサーバー、Visual C++、Visual Basic、FoxPro、FoxBase、Access、ODBC。 Windowsなどのシステム部門、そしてWord、Excelなどのアプリケーション部門と並ぶ、大きな部署のようである。

コンポーネント・ビルダーとソリューション・ビルダー
 プログラム開発の手法がかわりつつある。 CUI(文字ベース)からGUI(グラフィックベース)への移行、カスタムソルーションの増大、アプリケーションシステムのクライアント・サーバー化など新しいソフトウェア環境が形成されつつある。
 ソフトウェアの開発者も2つに区分けされつつあり、その上位で、エンドユーザがアイコンやメニューの操作を行なっている。
 下位の開発者を「コンポーネント・ビルダー」と呼び、オブジェクトやコンポーネントの作成と追加、マシンレベルの低位アクセスを行う。 上位の「ソルーション・ビルダー」は、既存の部品の組み合わせ、会話型のアプリケーション構築を担当する。
 コンポーネントと呼んでいるのはOLEオブジェクト、クラスライブラリ、カスタムコントロール、DLLである。 コンポーネント・ビルダーは、C++を使用して、これらを作りあげていく。
 ソリューション・ビルダーは、VBA(Visual Basic for Application)などを使って、エンドユーザ向けのシステムを作成する。
 リレーショナル・データベースの操作もODBCで統合され、Visual Basic 3.0およびAccessにはORACLE、SQLサーバー用のドライバーが入っている。 ローカルデータベースとしても、Btrieve、Paradox、Excel XLS、独自のAccessエンジンおよびテキストファイルを簡単に操作できる。
 VBAのサポートはExcel、Projectが先行し、最終的には、すべてのマイクロソフト製アプリケーションで使えるようになる。 共通のビジュアル編集機能やデバックツールが供給されるとのこと。 ただし、AppleScriptとは異なり、マイクロソフト以外のアプリケーションでのVBAのサポートは行えない。 このあたりは、ハードとOSのメーカー、アップルと、OSとアプリケーションソフトのメーカー、マイクロソフトの立場の違いである。
 OLE2については、個々のアプリケーションを複合した環境をWindows、NT、Mac間で実現すると、説明してくれた。
 現に、Macで稼働するOLE2はベータ版が出回っており、アップルのOpenDocなどのコアテクノロジーと競合している。 OLE2は、実際のクライアント・サーバを意識した作りとなっており、クロス・プラットフォームでの稼働は不可欠である。 マイクロソフトとしては、UNIXやOS/2でのOLE2のサポートは、サードパーティーに行なわせるようであるが、アップルやノベルAppWare、IBM SOMとのオブジェクト操作の標準化戦争が始まっている。
 
Visual C++ for Macintosh
 Visual C++については、その担当のためか、特に詳しく説明してくれた。
 Windows、WindowsNTそしてMacまではマイクロソフトとしてサポートを行なうと言明し、図の通り、シマンテック社の汎用クラスライブラリBedRock同様、クラスライブラリによるクロスプラットフォーム化を行なうらしい。 本当にこんなことが可能なのだろうか。 ODBCのように、性能やオブジェクトサイズが犠牲になることは明白である。 WindowsとMacのGUI部分はコンセプトも、APIの体系も異なっており、共通のクラスインタフェースを設計するのは難しいと思うのだが。 来年春には提供するとのこと。 これは、法人ユーザの情報処理システム部門からの「ウィンドウズ用に開発したソフトをマックでも動かしたい」という要望に応えたものであると説明していた。 
 また、OLE2をサポートし、Win16版とNT用のWin32版を統合した、新しいVisual C++ の1.x版を年内には出荷するといっていた。
 マイクロソフトのC言語は、エントリー用のQuickCと、プロ用のMicrosoft C/C++の2種類があったが、結局Visual C++に統合されるようである。 また、OLEを含む言語およびデータベース系の商品群で、Macもサポートする方針が出されている模様である。
Visual C++ for Macintosh の構造
アプリケーションWin32アプリケーション
クラスライブラリMFC2.0
APIWin32s Library for the Macintosh
OSMac System7
ハードウェア68K MacPowerPC Mac


情報技術(Information Technology)の将来
 大上段に構えたセミナータイトルだが、内容は薄かった。 パネラーを紹介すると、ジフ・デービスのBill Machrone、PCマガジンのJohn Dovorak、インフォワールドのStewart Alsopなど、コンピュータジャーナリズムの重鎮がずらりと並んでいる。 彼等が100分間パネル討論を行なったが、結局評論家は虚業なので言葉に説得力がない。
 さすがに話術は抜群で、会場は湧いていたが「メインフレームがなくなり、パソコン=コンピュータとなる」、「LAN、WANなどネットワーク関連の技術が飛躍的に進歩する」、「モービルコンピューティングやホームコンピュータなど新しい需要が生まれる」、「手書きの次は声の認識だ」など、内容は遠の昔しに分かっているものばかりであった。
 期待するOSとして、タリジェントのPinkや、IBMのWorkplaceOSを上げる人が多く、また、Newtonを誉めたりと、マイクロソフトの成功を妬んでいるような発言が目に付いた。 

展示会

 展示会も併設された。 100社ほどが出展し、大きなブースを構えたのは、IBM、マイクロソフト、ノベル、インテル、ロータスなど。 主な会社を紹介する。


Prodigy
 IBMと通信販売大手のシアーズが作ったビジュアルパソコン通信会社である。 グラフィック・インタフェースのため、初心者でも簡単に使える。 DOSからWindowsにコンピュータ環境が移行したように、現在の文字ベースのパソコン通信も将来は、こんなビジュアルな操作になるのであろう。 Prodigyの良いところは、Telescriptのような将来の話ではなく、現在の技術や一般的なパソコンで実用に耐える技術を使い、数年の実績を持っている点である。 DOS版とMac版の専用受信ソフトは、10ドルで売られている。 残念ながら、Windows版はまだである。

21 CenNet
 Compaqの関連会社で、ワイヤレスの電子メールソフト「MobileWare」を、この会場で発表した。 会社内のLANシステムと携帯型パソコンの間で、電子メール、FAX、ファイルなどを双方向でやり取りするものである。 数年で急成長が期待されているモービルコンピューティングの分野では、この種の製品が様々な会社から出荷されることになるであろう。

IBM
 Compaqとは競合しているはずのIBMも、OSメーカーとして、出展していた。 DOS6.1そしてOS/2 2.1を紹介し、特にOS/2については、C Set++などの具体的なソフトを見せるのではなく、開発者向けのサービスの紹介に徹していた。 技術サポート、ハードウェアや開発ツールの特価販売、技術セミナー、OS/2への移行ワークショップ、β版提供と一般的な開発支援以外に、マーケティングに対する支援も行なっている。

Microsoft
 展示スペースを裏表に分け、裏にVisual C++やWindowsNT、SQLサーバなどのOS、開発ツール系、表は、ホームパソコンPresarioを意識して、ホーム・エンターテイメント系のタイトルをずらりと並べていた。 マルチメディア・ストラビンスキーや、「ジェラシックパーク」で流行りとなった恐竜図鑑など、CD-ROMによる電子出版に力を入れている。 日本では岩波書店や三省堂が行なっているCD-ROMタイトルの販売を、米国ではマイクロソフトが自ら行なっている。 この調子でドンドン新作が出荷されれば、CD-ROM出版市場の半数を押さえてしまう勢いである。


Kazuo Shimokawa [EAST Co., Ltd.]