Windows HeartBeat #12 (1994年8月)
こんなノートが欲しい(上)

 この1年、パンパンにふくらんだ黒いカバンをさげて通勤している。 中身はノート型パソコンとA5判システム手帳、そして弁当と若干の資料類である。 はかりにのせたら6kgあった。

 今使っているのは、コンパックのContura 4/25cx。 重さ約3kg、出荷直後に購入したが、最近、モノクロ液晶で1.6KgのContura Aeroが登場し、価格性能比は1年で半分になった感がある。 また、米国では先行するNECのUltraLite
Versaに対抗して、コンパックがLTE Eliteという最上位機種を発表した。 ノート型の新製品ラッシュで、新しいパソコンを買おうか迷っている。 サブノート型では、Contura Aero、東芝T3400(DynabookSS)、HPのOmniBook、ノート型ではLTE Elite、NECのVersaなどのカタログを見くらべている。
 設計コンセプトとしては、DELLのサブノートやOmniBookが気に入っている。 「薄くて軽くて画面が大きい」ものである。 

 Contura 4/25cxは、CPUが486SX、25MHz、ハードディスク210MB、画面は8.4インチのTFTカラーである。 これにWord、Excel、PowerPoint、PageMakerなどを入れ、仕事のほとんどをContura 1台でこなしている。 画面の情報量を増やすため、VGA12ドットフォントを使っているが、あの貧弱なフォントにも慣れてきた。

 ほとんどの文書はWordで作っている。 仕事場が定ならない営業稼業なので、少し時間があくと喫茶店の片隅で、Wordを使い企画書を作ったりしている。 バッテリーは2時間大丈夫だ。

 客先で、長時間の打ち合せの場合は、開口一番「すいませんが電源を貸してください」とやっている。 先日、某社の府中工場でこれをやり、こわい部長さんにConturaをにらまれてしまった。

 打ち合せの資料もWordで作り、メモもその場でパソコンに入力している。 Wordで原稿、企画書、見積書、議事録、手紙、メモなどを書いているが、Wordの豊富な機能の1/3程度しか使っていない。 新聞、雑誌の記事をひろい集めたり、主要顧客の組織図を作るのもWordの担当である。 これらは、専用のソフトウェアを会社で作るつもりで、現在、その企画書を作っている。

 会社のカタログ類もPageMakerで自作している。 VGA、640x480の画面と内蔵のトラックボールを使って、PageMakerを操作するのは至難の技であるが、50頁以上のカタログやパンフレットを作った。 300DPI(インチ密度)のPostScriptプリンタで、リュウミンと中ゴシック、そしてHelveticaとTimesフォントを使って印刷し、そのまま色指定をして簡易カタログを作る。 必要に迫られて、PS Printというタイプセッター対応のプリンタドライバーを社内で開発してもらったので、これからは1270DPI程度の高密度の版下が作れるようになる。

 Excelは、売り上げ集計や、顧客管理などに使っている。 1000名以上の住所が入っているが、リストラで、毎月20名以上の部署名や住所がかわるので、データ更新にいそがしい。 変化の激しいパソコン業界なので、1年間に3、4回も会社をかわる人もいる。

 WinFAX、PowerPointも最近使い始めた。
 WinFAXは英語版だが、不自由なく使えている。 Wordで文書を作成し、送信のみに使っているが、相手のFAXに200DPIのきれいな文書が送れるのは気持ちが良い。
 PowerPointは、最近、セミナーの講師依頼が多くプレゼンテーションの機会もふえたので、重宝している。 特に4.0は、優れたウィザードやチュートリアル機能がついているので、マニュアルをいっさい見ないで使っている。

 仕事がら、評価用と称してパソコンメーカーからマシンを借りることがある。 今まで以下のようなノート型パソコンを借り、海外出張などで使用した。
東芝元祖DynaBook
東芝DynaBookV386
東芝DynaBookV486
NEC98ノートNV
NEC9821Ne
コンパックLTE Lite 3/25
コンパックContura 4/25c
IBMThinkPad 700c

 旧型DynaBookV486の4kgを越える巨大な弁当箱のような筺体や、サブノートのはしりである98ノートNVの3cmという薄さ、キー・ストロークの短さなどが印象に残っている。
 ノートパソコンには凝っており、Conturaも相当期待して購入した。
 仕事のすべてをパソコンでやるつもりであったが、個人情報管理ソフト(PIM)で、適当なものがなかったのと、3Kgの重さのために、システム手帳のコンピュータ化は行えなかった。

 15年ほど前から、能率手帳を使ってきたが、4年前にシステム手帳型のものにかえた。 最初のうちは、各種のリフィルを揃え、議事録や住所録、プロジェクト管理などとやっていたが、Conturaを購入してからは、それらのほとんどを、パソコンに切り替えることができた。 しかし、スケジュール管理と住所録は、コンピュータ化が行えずにいる。 住所録はExcelで管理しているが、狭い電話ボックスで3Kgのパソコンを取り出し、Excelの画面を見るのはつらいので、頻繁に使う住所、電話番号は、手書きしている。

 PIMソフトは、ロータスのOrganizerを使ってみたが、3日坊主に終ってしまった。 機能の問題と、重さ、そして情報の取得までに時間がかかるためである。

 Organizerは良くできたソフトだが、もっとオブジェクトデータベース的であって欲しい。 リンク機能で、スケジュールから相手の電話番号などが呼び出せるが、もっと強力なデータ連結機能が欲しい。 以前、ロータスの社員の方に、cc:Mail、Notesと連携した、強力なクライアント・サーバ間データ更新のデモを見せてもらった。 サーバ側のスケジュールとノートパソコン側のスケジュールを双方向で更新するのである。 これとは別に、クライアント内での住所録、スケジュール、電話履歴などのデータを関連付けて保持してもらいたいのである。 システム手帳メタファーと呼ぶに相応しいビジュアルな画面は素晴らしいのだが。

 最近ワードパーフェクト社からInfo Centralという、PIMソフトが出荷された。 オブジェクトデータをアイデア・プロセッサ的な階層構造で表現したもので、スケジュール管理と住所録のリンクなども簡単に行える。 OLE2で、ワードの文書などもリンクできる。 OLE2がまともな速度で動くハイエンドのノートパソコンでは、威力を発揮するであろう。 ワインリストや、パソコン一覧などのデータベースがおまけに付いている。

 ノートパソコンの重さ、情報取得時間、そして信頼性など、ハードウェア面の問題も残っている。 システム手帳の場合は、カバンから700gのものを取り出し、栞の付いた頁を開ければ、ほんの数秒で、今日のスケジュールを知ることができる。

 パソコンだと、3Kgのものを引っ張り出し、蓋をグッと起こし、電源ボタンを押す。 リジュームやスタンバイ機能があれば、すぐにWindows画面が表示されるが、ここまでたどりつくのに10秒はかかる。 ブートからの場合は、1分以上待たないと、スケジュールの画面はあらわれない。 

 携帯するには、重さがいちばんの問題であるが、フロッピィ・ドライブを外し、軽くしたサブノートで良いかというと、画面や、キーボードの小ささが気になる。 手帳の代用のみであればサブノートで構わないが、PageMakerやWordをサブノートの小さなキーを押しながら使う気にはならない。

 この原稿もWordで書いている。 途中で、光の辞典で漢字を調べたいのだが、VGAでは画面がせまくて、複数ウィンドウの表示は行えない。 1024x768のカラー液晶も発表されているが、まずは800x600クラスの画面でないと、たとえノート型であっても、Windowsパソコンと呼べなくなってしまう。

 信頼性にも問題がある。 車のトランクに投げ込むような、荒っぽい使い方をしているので、動かなくなったことがある。 修理に1週間かかったが、スケジュール管理をパソコンでやっていたら、お手上げになっていた。

 Plug & Play機能もすぐに欲しい。 マウス、ネットワーク、CD-ROM、CRTディスプレイなどプラグしたい装置がたくさんある。 CRTは、やはりハイレゾにパッと変わってもらいたい。 マウスを付けるためだけに、リセットしなければならないのは苦痛である。

 米国ではフルキーボードであったサブノートが日本のJISキー配列に変えたために、小さなキーになることがある。 ハードウェアの進歩で、小さなボディーに強力な機能を詰め込めるようになったが、人間の指のサイズは変わらない。 画面も9インチ以上、できれば800x600であって欲しい。 A4よりひと回り小さな、軽いノートの登場を期待している。


#12「こんなノートが欲しい(中)」