Open eBook

第2回 Open eBook ミーティングレポート
日時 1999/3/29
場所 シカゴ
Gleacher Center of the University of Chicago Graduate School of Business
報告者 イースト株式会社 コミュニケーション事業部
渋谷 誠

1. 会場

会場のGleacher Centerはシカゴのダウンタウンからシカゴ川を渡った北側、リバーフロントという観光地のまっただ中で、有名なトリビューンタワー(写真右)の斜め向かい。8時からラウンジで朝食のサービスがあり、会議は8時30に開始。昼食を挟んで夕方5時まで丸一日の予定である。会議場は大学の講義室のような雰囲気で、60人ぐらいの参加者で丁度いっぱいになる程度の広さ。

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2. 開会、自己紹介 (8:30-9:30)

全体の司会進行はNIST(National Institute of Standards and Technology)の Victor McCrary が取り仕切る。さすがにこういう会合には場慣れしているようでてきぱきと進行していく。
まずは全員が一人ずつ自己紹介。氏名所属の他、自分の業務内容についての簡単な紹介と、この共通仕様に期待していることを述べる。
参加者の約3分の1近くが出版社関係であるところが通常のコンピュータ関連の会議とは違うところ。日本からはサンフランシスコでの1回目から参加している日立の桑本氏、今回初めてのアスキーの松本氏と私、以上の3人だけ。他に漢字圏からは台湾のIntegrated Technology Express という会社から一人だけ。桑本氏も日本の電子出版界の事情を説明していたが、あまり反応はなし。その後の会議の全体を通じてみても、国際化や日本市場についての関心はあまり感じられなかった。まだまだ基礎固めの段階で、国際化については手が出ない状態の団体であるからやむを得ないところか。
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3. 仕様案概要説明 (9:30-10:00 Jeff Alger, Microsoft)

まずは、今回の主題である仕様案(Open eBook 1.0 Publication Structure Specification) 作成の経緯が説明された。
1月のサンフランシスコでの第一回ミーティングでの決定に基づいて、少人数による Authoring Group が結成され、彼らが Mailing List や週一回の電話会議でこの仕様を作成したこと、特に今回の会議直前の数週間にはかなり大きな進展があったことなどが報告された。
次に仕様の概要説明。HTML+CSSが基本で、将来的にはXMLを指向していること、暗号化や圧縮などの配布方式を規定するものではないことなどの大まかな方針説明であり、細かい話は後の詳細説明に譲られた。
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4. EBX仕様の紹介 (10:00-10:15 Brian Lambert, Glassbook)

Glassbook社が中心になって進められている、eBook関連のもうひとつの標準仕様である EBX (The Electronic Book Exchange System) の紹介が行われた。これは、暗号化や認証を含めた電子書籍のディストリビューションに関する仕様である。具体的には書籍サイトで使用するHTTPの拡張プロトコルなどを定めている。電子書籍自身のフォーマットを定めているわけではないので、決して Open eBook と競合するものではなく、補完し合っていくものであることが強調されていた。今年のQ2には最終仕様とサンプル実装を公開する予定とか。 meeting4.jpg (21687 バイト)

5. 仕様案詳細レビュー (10:30-12:30 Allen Renear, Brown University)

15分の休憩を挟んでいよいよ本題の仕様レビューが2時間に渡って行われた。Allen Render というのはブラウン大学の博士で、1ヶ月ほど前に 0.6 版仕様に対する15ページに渡る詳細な意見書を提出した。0.6版までは仕様書らしからぬ曖昧な記述が多かったが、彼の意見によって 0.7 ではほぼ仕様書としての体裁が整ってきた感がある。

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6. 仕様案への意見吸収 (2:00-3:30)

1時間半の昼食休憩を挟んで、仕様案への意見吸収が行われた。中央付近の席に陣取った Authoring Groupのメンバーに対して、それ以外のメンバーがまわりから質問をするというスタイル。非常に活発に意見が出されたが、その多くは Authoring Group の mailing list で既に議論されたことであったようだ。Authoring Group としてはここで出た意見を検討し、さらに 1.0 へ向けての作業を進める。つまり、この会議はあくまで進捗報告と意見吸収という性格のものであって、仕様自体に意見を反映させたいのであれば Authoring Group に参加する必要があるということだ。 meeting6.jpg (17771 バイト)

7. 仕様の今後の運営について (3:45-4:30)

これまで "initiative" という単なる有志の集まりで作ってきたこの仕様だが、1.0 の完成後どのようにするかという問題が話し合われた。NIST の Victor McCrary から提示された選択肢はふたつ。
  • 既存の規格団体に提案して以後はそこに任せる
  • 新たな規格団体を作る方向で検討する

多少の議論はあったものの、採決では圧倒的多数で後者に決定。Authoring Group とは別に新団体の検討をするためのワーキンググループを作ることになり。ボランティアでこれへの参加メンバーが決定された。

最後に、次回の会議は出版関係社の多い東海岸の New Yorkで5月24、25日に行われることが発表されて会議は終了した。

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8. カクテル&ディナーパーティ

この後、今回の会議のホスト会社であった RR Donnelly & Sons Company の本社に場所を移してパーティーが行われた。シカゴでは由緒ある印刷会社で、会場となった部屋は「グーテンベルグ聖書」を始めとして、由緒ある印刷物がたくさん展示された非常に豪華なレセプションルームであった。


4月28日には日本電子出版協会の主催で、Open eBook仕様についてのセミナーが開催されました。

Makoto Shibuya [EAST Co., Ltd.]