旅の記録 1994年11月 Las Vegas
COMDEX Fall 1994


はじめに
 第16回目の秋季Comdexが例年通り、砂漠の中のギャンブル都市、米国Las Vegasで開催された。主催はThe Interface Group。会場は Sands Expo and Convention Center(SECC)とLas Vegas Convention Center(LVCC)、そしてLVCCからつながっているHiltonの展示場とSouth Annexである。昨年までBally'sやCaesars Palaceのようなホテルも会場になっていたが、2ヶ所に集約したので移動が少なくなり見やすくなった。しかし、規模が縮小されたわけではなく、SECCの1Fや、LVCCの2Fなど今まで一部の展示しか行っていなかった場所を全面的に使いスペースを増やしている。
 秋のComdexは、今回で5度目である。3回目以降「Press」の資格で参加している。プレスとして参加すると、プレスルームの使用やプレスキットという説明資料などが入手できるので、便利である。プレスとしての参加申込書には、媒体名を明記しなければならない。コンピュータ雑誌にも色々記事を書いているが、「Windows View Magazine」のDirectorと記載している。あの幻のWindowsコンソーシアム会報である。
 というわけで、私はこの会報に記事を書く義務があるので、今回少し量が多いが、事務局にお願いして掲載することにした。今年はLVCCに隣接したLas Vegas Hiltonに泊まったので、移動時間が節約できて、筆も進んだ。1ヵ月前に買い換えたノートパソコンDELL Latitude XPのMicrosoft Wordも快適に動いてくれる。
 3年ほど前にも、この会報にComdexレポートを載せたが、比較すると面白いであろう。Windows 3.1の出たてで、DDEやTrueTypeをしきりに宣伝していた。たったの3年でパソコンの世界は様替わりである。
 91年がNetWare、92年がWindows 3.1、昨年はPowerPCの年であったが、今年は目玉が存在しない。強いてあげれば、Information At Your Fingertips 2005であろう。では、そのキーノートからご紹介しよう。


キーノート・スピーチ
 最近はキーノート・スピーカーが固定化している。今年はMicrosoftのBill Gates、NovellのFrankenberg、IntelのAndrew Groveという顔ぶれで新鮮味がない。ただし、業界自体の動きが激しいので、内容は期待できる。Bill Gatesは他の仕事があって聴けなかったので、録画のビデオと数人のマスコミ関係者から聞いた話をまとめてお伝えしよう。Andrew Groveは、Aladdin Hotelまで車を飛ばして聴きに行った。

Information At Your Fingertips 2005
 1990年に秋のComdexキーノートで発表したInformation At Your Fingertips(IAYF)というコンセプトを今年のキーノートで更新した。「すべての家庭と机にコンピュータを」という創業以来のテーマを「すべての部屋と自動車とポケットに」と言い替え、これから10年先、2005年にデジタル・ワールドはどのように進化しているかをプロモーション・ビデオを駆使して説明した。財布PC、電子新聞、双方向カーナビゲーションなど2005年までに「彼が実現しようとしている」技術を、1万人の聴衆に説明した。2日目にも、3日目にも、4日目にもこのビデオがLVCC会場内数ヶ所のモニターで流され、いつも黒山の人だかりである。表紙に「2005」と大きく書かれた豪華なパンフレットが配付され、ハガキで申し込むと、このスピーチを録画した60分ビデオを実費9.95ドルで販売するとある。
 AT&T、Compaq、Intel、AT&T GIS、NTTなど様々な企業のこの種の未来ビデオを見てきたが、それらは皆「我々はこのようなコンピュータ社会が生まれることを予測しています」というものであった。Bill Gatesのキーノートには「私がこのような社会を作ります」という迫力がある。
 ビジュアルパソコン通信Microsoft Network(開発名Marvel)や先ずはユーザーサポート用のMicrosoft TVも発表され、百科事典CD-ROMタイトルであるBookshelfなどのデータを配信する仕組みが既に構築されている。
 このネットワーク、Intuit社の吸収合併、財布PC、VISAカードとの業務提携、これらの点と線をつなぐと「Microsoft Digital Money」と呼ぶべき構想が浮かび上がってくる。現在Internet上で、Digital Moneyという仮想の通貨が流通しているが、Bill Gatesはこのバーチャルな世界を、リアルな現実の世界に持ち込もうとしている。彼にとってInternetはUNIXのようなもので、どうせ皆で民主的に作りあげたものなど成功する訳がない、と感じているのではないだろうか。UNIX対Windows NTのようにInternetに対抗する何かを考えているようだ。
 今年をIAYF 2005実現の最初の年と位置付け、これから毎年、何を実現したか、今後何を行うかをComdex初日のキーノートで発表する気でいるのではないだろうか。

IntelのAndrewおじさん
 キーノートの会場は、MGM Grand Hotelに近いAladdin Theaterである。いちいち町はずれまで移動するだけのことはある立派な劇場で、7000人が収容可能とのこと。初日のBill Gatesはここを満杯にし、あふれた3000人は別室のビデオモニターでの聴講となった。Andy Groveの場合は、6000人ほどに入りである。
 テーマは「次世代のPC」。1991年の自らのComdexキーノートをビデオで紹介し、その時、将来の技術として紹介したものが、今どの程度実現できたかを検証するという、いかにも善良な技術者の彼らしい内容である。この真摯な態度を少しでも、Bill Gatesに見習ってもらいたい。
 うまく達成できた技術として、PCI Local Bus、Plug & Playの一部 、カラーノート、電子メール、マルチメディアをあげ、できなかったものとして、ペンベースのワイヤレスノートとマルチメディア通信をあげていた。今後、2年以内に、マルチメディア系の全てのボード類は、パソコンのマザーボードに入り、DSPもソフトで実現できると予測している。現在、録画はDSPハードウェア、再生はソフトで行っているが、CPUの高速化により、録画もNative Signal Processing(NSP)と呼んでいるソフト化が可能であるとのこと。最近Intelが強力に推進しているテレビ電話の仕組みである「ProShare」を使ったデモも行われ、会場とアイルランド間で会話が行われた。
 パソコンの低価格化と処理能力の向上により、91年に6199ドルの486パソコンが230ドル/MIPの価格性能であったが、今日、Pentiumパソコンは2599ドルで17ドル/MIPと、13倍も進歩した。これから2004年までに10億台(1,000,000,000台)のパソコンが販売されると予測し、テレビもパソコンと融合するとしている。家に帰ってもタイトルバーやプルダウンメニューを見て、操作しなければならないのは、Windows関係者にはつらいことであろう。


ハードウェア
PowerPC
 昨年のComdexの話題の主は今年も健在である。LVCCの前にIBMの半導体部門がテントを張って陣取っていたが、今年はソフトウェアを主体にしたパビリオン展示となっている。
 Adobe、ClarisなどのMac系、Interleaf、Frame TechnologyなどのUNIX系、Shape ware、CorelなどのWindows系が入り乱れての展示である。どのディスプレイでも、高解像度でカラフルな色彩の物体が限りなく高速に回転したり波打っている。
 CPUがPowerPCであれば、ハードウェアやOSは問わないのでOSは様々である。やはり多かったのはMacのSystem 7.5、そして、Windows NT、OS/2、Solaris、AIXの順である。来年はPowerPC+新PRePでハードウェアを規定した展示が期待できる。
 数年前からのCISC vs. RISCのチップ戦争はIntelに対抗するRISC陣営の勢力がはっきりしてきた。PowerPCにNEC/MIPSのMIPS、DECのAlpha AXPが続き、HPのPA 、SunのSpark 、AT&TのHobbitは影が薄くなっている。PowerPCの採用企業は、Apple、IBM、Motorolaに続いてCANON、TOSHIBA、ゲームの3DOと増加しており、勢力を広げている。プロモーションビデオでは、CISCのイメージとしてWindowsの「砂時計」が画面に登場した。Intel対抗むき出しである。
 Intel対Motorolaの戦争は10数年前の8ビットチップの時代以来である。8080対6802、16ビットでは、8086対68000そして32ビットのPentium対PowerPC。Intelが2勝しているが、3回戦の決着は数年後であろう。

MIPSはNECのCPU?
 LVCCの前庭やホール入り口にはたくさんの垂れ幕が下がっているが、NECがMIPSチップを使ったWindows NTを大宣伝している。曰く「The Brains Behind Windows NT」。「Brains」と複数である。Windows NTといちばん相性のよいCPUですというわけだ。
 昨年はクライアントのImage RISC stationと、サーバーのExpress RISC serverを発表したが、今年はそれを進化させて、「2000」を後ろに付けた。VR4400の200MHzは90MHz Pentiumの3倍高速だそうだ。 MIPS社のブースもNECのロゴで溢れており、MIPSはNECのオリジナルチップであるかのような大攻勢をかけている。量産MIPSチップはVR4400に集約されつつあり、VR4400には大きなNECのロゴだけが光っている。

Macに勢いなし
 ComdexでのMacは、例年ブースも小さいし勢いがない。Mac Worldという大規模な展示会が毎年全米の数ヶ所で開催されているのでMacはそちらで見た方がよいのだが、それにしてもブースに客が入っていない。カタログや資料も初日からコピーを配付しており、出展者のやるきも感じられない。グラフィック・パソコン通信のeWorldくらいしか新しいものが見つからなかった。
 PowerPC版のMacが世に出て1年が経過し、Newtonもあまり冴えないとあって、見るべきものがないのである。昨年はNewton 110が展示の半分を占めていたが、今年はおとなしい。
  Ziff-Davis 、IDGなどの出版社は、会場で最新号の雑誌を配付しているが、Mac WorldやMac Userが4日目になっても売れ残っており、気の毒になってしまった。

AT&TのPersonal Link
 Newtonに代わって人気を集めていたのが、General Magic社のTele Scriptを使ったAT&Tの通信サービス「Personal Link」とMagic Capを搭載したPersonal Communicatorのブースである。SONYとAT&Tに挟まれた位置にあり、最初SONYの展示かと間違えたが、AT&Tであった。
 まん中に説明用の50人ほどが入るシアターを置き、周囲に10数ヶ所の個別展示を配している。ここにMotorolaのENVOY、SONYのMagic Link、Panasonicの無記名が並んでいる。どれもNewtonより一回り大きなMagic Cap Communicatorである。このレイアウトは、昨年のAT&T EOのEO440の展示と同じである。このプロジェクトに少々関係したので、胸に迫るものがあった。EO440の半分以下のサイズだし、Tele ScriptはNTT、富士通、SONY、松下、東芝が出資し、業界標準となりつつある。AT&Tも同じ失敗は繰り返さないであろう。
 Magic Capは、机、建物、街などの一般的なメタファーを使って情報の入手が行えるOSで、情報を蓄えるDatabook、外からの情報が入るINbox、外に情報を送るためのOUTbox、電卓、住所録などの機能がある。入力はEO440やNewtonの失敗を見た後で作ったので、仮想キーボード方式である。ただし、文字認識ソフトはサードパーティが出るようで、出展されていた。話題のIntuit社もQuicken for Magic Capを出展していた。
 SONYのPIC-1000 Magic Linkは大きさが19cm×13cm×2.5cmで重さ540g(1.2lbs.)。価格は約9万円。1MBのRAMとPCMCIA type IIのカードスロット、2400bpsのモデムが付いている。バッテリー持続時間は、オプションのリチュームイオンバッテリーを使えば12時間とのこと。
 AT&TのPersonal Linkサービスは、月1000円でメールボックス、毎日のニュース、無制限のメッセージ交換が行える。FAXの1頁が100円である。eShop社がショッピング・アーケードを予定しているし、サービスはすぐに飛躍的に増えていくであろう。Tele ScriptのIntelligent Assistantsを使って、膨大な量のメールやニュースから、自分が得たい情報を取捨選択できるのが特徴である。
 メールはゲートウェイ経由で、Internet、MCI Mail、CompuServe、Americas OnlineそしてSky TelのPager(ポケットベル)につながる。文字情報以外に、グラフィックス、アニメーション、サウンドなどが扱え、「スタンプを押す」操作でMIDIデータなども添付できる。
 Magic Cap上のアプリケーション開発ではSONY Softwareが先行しているようで、数種類のタイトルが動いていた。General Magic社としてはアプリケーション開発をたくさんの会社にやってもらう気はなく、限られた会社から良質のソフトを出してもらう方針である。

マルチメディア・ノート
 12cmのフルサイズCD-ROMドライブ搭載のノートが大手2社から発表された。IBMのThinkPad 755CDそして、PanasonicのV41である。マルチメディアには強力なエンジンが必要なため、どちらもDX/4の100MHzである。いずれのマシンも日本でも同時発売される。最近DELLのLatitudeやCompaqのConturaのように、日本と米国で同時発売されるケースが増えているが、Panasonicは日本の会社としてはじめてUSとの同時発表を行った。V41の日本名はJet AV。NECのVersaや東芝のPortageも米国に半年以上遅れて日本で発売されている。
 Panasonicはキーボードを持ちあげると、下に2枚のCDが収まっている。デュアルCDかと思いきや、1枚は予備のCDを入れるストックスペースである。関西らしい発想が楽しい。
 ただし、開発コンセプトは少し異なるようで、V41は8cm CD-ROMドライブを搭載したJetの進化で、ポータブル・プレゼンテーション・マシンを標榜しているのに対し、ThinkPad 755CDはあらゆるデバイスとの統合の一環として、CD-ROMをサポートしたようだ。電話、赤外線通信なども入っている。赤外線でSHARP Wizard(日本名ザウルス)との赤外線通信も行える。

ノートパソコンも続々と登場
 DECのHi Noteシリーズは、4lbs.つまり1.8Kgに9.5インチの液晶、ピッチ19mmのキーボードが付いたサブノート「Hi Note Ultra」から、2.5Kg.のカラーノートまで、全部で10製品を発表した。CPUはDX2/50とDX4/75。16bitのオーディオが付いている。これからのノートはすべてビジネス・オーディオ付きであって欲しい。30台以上並べてあったが、日本のシチズンが製造を担当したわりには、手触りが少し気になった。ノートパソコンもカタログ・スペックだけでは、その「作り」はわからない。触って、キーボードを叩いてみて、使われているプラスチックの材質や裏面の仕上がり具合、強度などを調べないと、製品の正しい評価は行えない。
 HPも遂にOmni Bookをカラーにした。重さ1.7kg、バッテリー寿命は4時間。形は従来通り。そこまではよいのだが、Omni Book 4000CTという余計なものを出してくれた。フロッピィ・ドライブ付きのただのノートパソコンである。出すのは市場の要求なので仕方がないが、せめてOmni Bookではなく別の名前にしてもらいたかった。私は勝手にOmni Bookにある期待を抱いていた。数年後、カラーで8時間の寿命で、Omni Book 400シリーズと同じサイズと重さのサブノートを出してくれる、という希望に近い期待である。
 Pentium搭載のノートも出てきた。TOSHIBAのT4900とTIのTravel Mate最上位機種5000シリーズである。TIはPCIバスも使っている。
 T4900とPentium 75の同時発表はこちらでも話題になっていた。

高解像液晶
 NEC Electronicsが800x600の量産可能なカラー液晶を展示していた。今年のComdexの特徴として「ハイレゾ・ノート」を予測していたが、製品展示はNECのVersa Mのみ。これも、私は会場では見つけられず、資料で知った。昨年もSHARPやNECが1024x768のTFTカラー液晶を「こんなものも作れます」という、試作品展示を行っていたが、今年のNECは「即納します」とセールしている。13インチの1280x1024まで展示されていた。SHARPは21インチの世界最大の液晶をガラスケースに入れて展示している。液晶ディスプレイは、最近、韓国のSamsungが量産化に成功して話題となったが、まだ日本の特産品である。
 PC Magazineなどのノート・パソコン比較表には「LCDのメーカー名」という覧があり、SHARPや、日立、三洋、エプソンが多かった。NECは今までカラー液晶の外販には積極的ではなかったが、今度は売る気のようだ。


OSと開発ツール
Windows 95
 Microsoftは例年通り、メイン会場であるLVCCの入り口に巨大なブースを持っており、いつものように自社展示とサードパーティー用のパビリオンで構成している。パビリオンはISV(ソフト)、Plug & Play(ハード)に分かれている。隅の方でAtWork Technologyを使った周辺機器も展示されていた。Windows 95やマルチメディア、OLE2などのカテゴリーは存在しない。なぜかといえば、大半の展示に「We're Building for Windows 95」のパネルが付いており、タイトルが左詰めで、落ち着いた配色の画面の中で各社のソフトが動いているのである。
 OLE2にもCorel DRAW、Visio、Win FAX、Power Builder、SASなどパビリオン出展者の半数は対応している。マルチメディアも当たり前になっている。なぜか画面が動き音が出ているブースが多い。展示を派手に見せるために、OLEでAVIファイルを貼り付けているのである。
 「...for Windows 95」と書かれたディスプレイに付ける小さなパネルは、会場内の所々で見かけた。5月にAtlantaのComdexで一般公開され、9月のDallas、Windows Worldで発表されたWindows 95が着実にソフト会社にも根付いてきている。
 100人以上が入る大きな説明スペースでも、Windows 95の新しい機能つまり「使い勝手を重視したユーザ・インタフェースの向上」、「OLE2で強化されたDrag & Drop機能」、「Plug & Play」などの説明を行い、黒山の人だかりであった。
 日本での出荷を目前に控えたWindows NT 3.5も、DEC、AT&T GISなどのソリューション系企業が大々的に展示していた。

Internet週刊誌WinNews
 WinNewsはWindows 95に関する最新情報を隔週で届ける電子メールである。Internetのenews@microsoft.nwnet.comに「Subscribe WinNews」とだけメッセージを入れれば、配信してくれる。Microsoft Network、Prodigy、America Online、GEnieでもファイルを見られるが、日本ではサポートされていないので、CompuServeの「GO WINNEWS」で入手するのが近道であろう。
 開発者を対象とした情報ではなく、一般ユーザー向けのものである。

オフィスの後ろのBackOffice
 Word、Excel、PowerPoint、Mail、Accessなどのクライアントツールに対して、それらをサーバー側から支援するBackOfficeツールアプリケーション群も展示され、その説明も行われていた。
 BackOfficeは、Windows NT Server 3.5、SQL Server 4.21a、SNA Server 2.1、System Management Server (SMS) 1.0、MS-Mail Server 3.2で構成され、クライアントからは、ODBC、MAPI、OLEを使って、アクセスする。ここまで仕組みができてしまうと、個人的には、Windows NTソリューションでまっしぐらに進みたくなってしまう。

Win Padは何処
 仕事の関係でWin Padには以前から興味を持っていた。7月頃、PC weekにSHARPがComdexで発表すると記事が載ったので、期待して見に行った。それらしきハードウェアは置いてあったが、動いていたのはWindows for Pen computingであった。
 型番はPT-9000、CPUはIntel互換のVG230。6MBのROMと2MBのPSRAMが載っており、23cm×16cm×3.5cmで重さは電池込みで1.1Kg。640×400のモノクロ液晶が付いている。電池寿命が何と22時間。さすが電子手帳の雄、SHARPだけのことはある。携帯端末向けの低消費電力CPUを開発するIntelとVLSIの共同プロジェクトは話題に上らなくなったが、最近の長寿命インテリジェント・バッテリー技術と消電力設計技術により、SHARPはこの22時間を達成した。
 標準OSはWindowsではなくGEOSとなっている。携帯端末用のOSには、みんな困っている。PenPointが消滅し、Windows for Pen computingは不完全、GEOSではアプリケーションが揃わない。Win PadはMagic Capのようなネットワークと絡んだCommunicator用のOSとして成長しそうだ。Mobile ComputerのOSにポッカリと穴があいてしまっている。Microsoftとしては、「ところでその市場にOSを出していくら利益が出るの」という勘定の話になっているのかもしれない。

みんなでワープしようぜ
 IBMの新しいOSのテーマは「Get Warped」。Bob Dylanの古い歌に「Everybody must get stoned」というフレーズがあるが、ワープしちゃおうよと誘っている。OS/2 version 3.0のWarpは、社長の命名とのこと。OS/2 for WindowsがWarpに進化し、こちらがメインの商品として売られている。
 IBMのブースはOS/2 Warpを中心にして展示している。OS/2 for PowerPCも動いている。OS/2 Warpに対抗するWindows 95の比較資料も立派なものが用意されている。Microsoftからの情報よりも、この資料の方がWindows 95の位置付けを明確に教えてくれる。
 また、WarpをInternetの入り口と位置付け、Internet関連のツールを多数用意している。Photo CDをOSで標準サポートするなど、以前のIBMでは考えられない、フットワークの身軽さが感じられた。

Taligent
 やっと出てきた。今年だめなら消滅が噂されたであろう幻のOSである。
 1991年7月のIBM、Appleの劇的な共同開発事業により設立されたこの合弁会社は、Macの新OS開発プロジェクト「Pink」にIBMが参加する形でスタートを切った。この発表で、95年までにオブジェクト指向OSを出すと発表された。しかし、今回、急遽メインホールでの出展をキャンセルしたBolrandのブースで動いているのは、OSではない。OSにかぶさるオブジェクト環境である。何がOSかの議論は難しい。General Magic社のMagic CapがOSであるか否かは意見が分かれるであろう。少なくとも、Taligentは、既存のOSであるOS/2、Windows、Windows NT、UNIXなどの上で動く。しかし、稼働中のメモリ・レイアウトやディスク専有率を見ると、Taligentの方が大きいかもしれない。
 オブジェクト指向技術を活用したビジネス・ソリューションについて、IBMは自信を持っているようである。

IBM International Event
 IBMは今年Bally's Hotelに陣取り、世界から1500名近くの参加者を得てコンピュータ戦略の説明会を開催した。ホスト役は社長のLou Gerstner と同じNabisco社出身のRichard Thoman。50才くらいの若手で、上席副社長、ソリューション系の総責任者である。
 昨年は、Las Vegas郊外のCashman Field Centerで開かれたが、今年は一昨年までComdexのマルチメディア・ショウケースの会場だった、Bally's Casino & Hotelの広いEvent Roomを貸し切りでの開催である。1500人の半分は各国のIBM社員のようで、内容もOS、PC、ソリューションなどの各責任者や担当が、その方針を説明した。昨年のJim CannavinoのOS/2 for WindowsやPowerPCの説明のような新鮮味はない。ただしIBMの本体がこの会を主催しているようで、 PowerPC、OS/2、AS/400の説明があり、昨年のような気迫は感じられず、ゆったりとした余裕を感じた。
 MicrosoftのWindowsスケーラビリティも、10年前に我々がSAAで唱えていたではないか。Windowsのユーザインタフェースもその中のCUAで規定していたものである。焦る必要などない。
Changeを訴えたクリントンも失速気味だし、それほど変えることはないという自信と、ソリューション・ビジネスならMicrosoftに負けるわけがないという余裕を感じた。

ダブルバイトを通してくれ
 Microsoftは、開発ツールとMicrosoft Pressが独立したブースを出している。開発ツールはOffice、Access、VB、Visual C++などが出ていた。Visual C++もいよいよ2.0の出荷である。結局パッケージは3つに分かれるようだ。32bitのIntel系「Visual C++2.0」、RISC系の「Visual C++2.0 development system for MIPS and DEC Alpha AXP」、そして680x0系のMac用のクロス開発環境である「Visual C++2.0 cross-development edition for Macintosh」である。Win32sでは不満な16bit開発者向けに「Visual C++1.5」も販売が継続される。PowerMac版はもう少し先になるとのこと。
 ツール系の開発者向け情報は、「Developer Platform CD」に統合され、日本でも多くの開発者がその恩恵に授かっていたが、新たに「Visual C++ Subscription」という仕組みが作られた。これに申し込むと、年3回、Visual C++関連の最新情報が入ったCD-ROMが提供される。ドキュメント、サンプルソース、MFCの追加機能、ODBCドライバー、OLE Custom Control開発キットなどが入っている。
 Macで突如出現したMetrowerks社の680x0、PowerPC両用C++開発環境である「Code Warrior」も、パッケージ代金に、年3回のアップデートを含んでおり、CD-ROMの配布を約束している。OSやツールの動きが激しいので、3ヵ月に1回程度は開発環境の更新が必要な状況になっている。
 499ドルなのでさっそく申し込もうとしたら、「Offer Good Only in the 50 United States and Canada」と小さく書いてある。またか!と怒りが込み上げてくる。
 開発ツールはすべて、US版でDBCS対応にして漢字の問題を解消し、最新の環境で日本語アプリの開発が行えるようにしてもらいたい。マニュアルが英語であるのは構わないが、物が入手できなかったり、US版と日本語版の出荷時期に半年以上のギャップがあるのがつらい。Microsoftの日本法人(MSKK)もOSについては90日ルールというものを作っているが、開発ツールについては体制が整っていないようだ。遅れに遅れて「これはパス」など、ひどい状況である。OLE2に対応してくれといってもVisual C++1.5は出荷されていないし、Visual Basic 3.0が無くて困っている人は数知れない。今後Office開発キットやAccess、JetなどのSolution Builder系のツールがBack Officeと絡めてどんどん改定されていくであろうが、これらのバージョンアップはどのように行うのであろうか。OSより先にツールを充実して欲しいし、どうせやるなら、すべてのソフトで90日ルールを守ってもらいたい。
 MFC3.0のWhite Paperが配布されていた。30頁ほどの概要説明書で、CompuServeのMSMFCフォーラムに載っている。また、MFCの移行ツール(Migration Kit)もフロッピィで配られていた。これはWindows SDKのCソースをMFC2.5(16bit)またはMFC3.0(32bit)に移行するツールで、MSDNのCD-ROMにも同じ物が入っている。持っていない場合は、CompuServeのMSLANGフォーラム(DISK1.ZIP)からダウンロードできる。


ソフトウェア
Sandsの地下は大騒ぎ
 マルチメディア・ショウケースが復活し、メイン会場のひとつであるSands Expoの地下で開かれているというので、行ってみた。入るなり、大音響とグルグル回る3D Graphicsに圧倒されてしまった。どのソフトもレベルが高い。UNIXから下りてきたと思える高級グラフィック・ツールが多数動いている。
 Caligari社のtrue Space、New Tek社のLight Wave 3D、Strata社のStudio ProとVirtual 3D、そしてお馴染みのKai's Power Tools、など、すべて3Dグラフィックス作成ソフトである。 UNIXのCADで名高いEvans & Southland社も小さなブースを出していた。MacのドローツールCanvasも3Dモデリングが可能になった。LVCCに陣取るAdobeにはDimensionsがあるし、AsymetrixもDrag & Dropで3Dグラフィックスが作れる3D F/Xというツールを出している。
 モーフィングソフトもGryphar社のMorph、Ulead社のMedia Studio、QuickTimeを使ったValis社のmetafloなどがあった。
 完成度の高いマルチメディア・タイトルも出てきた。Compton's New Media社のSecrets of Stargateは同時公開される映画のAdventureゲームである。QuickTimeを使用し、WindowsとMacで稼働する。定価は39.95ドルだが、帰りにSan FranciscoのFly'sで買ったら新製品なのに特価の29.95ドルと、映画2回分の値段だった。映画自体コンピュータグラフィックスを駆使して作られているので、そのデータをCD-ROMに焼けばよいので、安く作れるのであろう。
 DiscisのJewels of the Oracleも人目を引いていた。Silicon Graphicsをブン回して作りましたというような、非常に美しい画面である。
 Sirius社の特価パック5ft. 10PakもVolume 3まで出ている。Windows MPC対応のCD-ROMを10枚セットにしたもので、10枚セットで特価25ドルである。1枚何と2ドル50セント。Volume 3は3ft. 6pakで子供向けとなっている。
 ビデオボード・メーカーも軒並みマルチメディア化を推進している。先行するCreative社はその販売力を活かし、データソースを持っている、Fodor's、LIFE、Sports Illustrated誌などと提携してCD-ROMタイトルを出しはじめた。そして、「Blaster」という雑誌まで出版した。翔泳社のGURUのような編集内容で、悪い紙を使い、若者受けをねらっている。
 会場近くの郊外型パソコンショップCompUSAが夕方からシャトルバスを出していたが、その広告を見ると、マルチメディア・パソコンの価格は、ほぼ13万円。これで、Packerd BellのDX2/50、4MBRAM、420MBHD、2倍速CD、14"モニター付きである。Apple Performa 475は12万円台である。

Comdexエロチカ
 昨年このタイトルで、Windows World誌にコラムを書いたが、今年は書けなくなるはずであった。主催者がワイセツな商品の出展を規制したからである。昨年のComdex終了直後に、Interface Groupは、「来年は禁止します」という通達を出していた。
 ところが、在るは、在るは。昨年の倍以上の規模である。販売店の出展を含めると、アダルトCDが置いてあるブースは20ヶ所近くあった。今年のテーマは「Interactive」。コンピュータなので対話ができて当たり前のなのだが、昨年は静止画や映画が多かった。今年は動画の長さを競っている。中には「2hrs Full Screen, Full Motion, Interactive Video」とVideo CDも脱帽のタイトルまである。どんな技術を使っているのか興味があるが、成田で捕まるのも面倒なので買わなかった。ほとんどのブースで即売しており、女優のサイン会も4、5ヶ所見受けられた。自分の写真付きのCDにサインして、一緒に写真に納まったりと、サービス満点である。
 サンプルCDを販売している所もある。Microsoft HomeのサンプルCDは無料で配布しているのに、アダルト物は10ドル位の金をとっている。それでも結構売れていた。
 Tokyo NightlifeというツアーCDが面白かった。ゴールデン街やビデオレンタルショップなどを会話型で紹介していくものである。外人が作ったようで、日本人の視点ではないので、それがまた面白い。ボーナスとして野球挙のKimono Gameが入っている。
 3DO対応の17才以上物や、要MPEGのタイトルなども出ている。自主規制が念頭にないお国がらなので、来年はまた増えるであろう。日本のMac Worldのようにブースを区切って、赤い線でも引いておいて欲しい。
 これらをまとめて紹介する雑誌は、日本ではI/O別冊で出たが、こちらでは見あたらなかった。この種のタイトルのレビュー誌は必要だと思うのだが。

ソフトウェアはHomeに向かう
 Microsoft社の組織と同じ様に、アプリケーションソフトの世界も、HomeとBusinessに二極化してきている。家庭用、子供用のソフトもMicrosoft Homeの影響か、たくさん出ていた。
 Asymetrixは、 Pink Pantherなどスクリーンセーバー系の4製品をEntertainmentシリーズとして出し始めた。Kids Mailという電子メールソフトも登場した。
 カナダのDelrinaやPhoenixなど、基礎的な技術力を持つ会社も、Home分野に進出してきた。
DelrinaはWinFax Proでお馴染みだが、スクリーン・セーバーを数本出した。Phoenixは、非常に高度なCD-Audio、Photo CDの再生ソフトを出している。
 Disneyは、Lion Kingを早々とCD-ROM化した。それも3種類である。映画と同じ動画が入った物語CD「Animated Storybook」、登場する動物達のイラストをカラープリンタで印刷し、グリーティング・カードなどを作る「Print Studio」、40個の名場面の静止画が入った「Screen Scenes」である。
 WordPerfectは、1年前からMain Streetシリーズを出しているが、これもHome系のソフトを増やしている。

Internetネタなら客が集まる
 Comdexは月曜から金曜までの5日間開催される。昨年は最終日までいたが、展示が2割ほど終わってしまうし、閑散としていた。今回は4日目までいたが、かなり人も減っている。それでも人だかりのあるブースがいくつかあった。MicrosoftとInternet関連ソフトのブースである。Microsoftは場所も良いし、Windows 95なので人が集まって当然だが、Internet関連は新興の企業が多く、場所が悪いにもかかわらず繁盛していた。
 PSIのInter RampとNet ComのNet Cruiserの2社がクライアントソフトを配っていた。Windowsパソコンと14.4Kbps程度のモデムがあれば、Internetに取りあえずアクセスできる。Net Comは月19.95ドルで、400時間使え、最初の1ヵ月間は試用期間で無料である。Inter Rampは日本からの使用を想定した価格を設定している。Mosaic Communicationsは社名をNetscape Communicationsに変更したが、相変わらず人だかりができている。
 携帯電話が無料で販売されているのと同じで、使用料収入で成り立っているので、ソフトは無料になっている。San FranciscoのFly'sでは、Net Cruiserがレジスターの脇に「Free」と書いて置いてあった。

情報出版社
 コンピュータ関連の出版社も多数出展している。
・Ziff-Davis
 ソフトバンクの買収劇で日本の一般紙にもZではじまる妙な社名が登場した。週刊の無料配布誌PC weekが有名だが、ハードウェアの比較記事で定評のあるPC magazineそしてPC/Computing、Mac User、Mac Week、Windows Sourceなどを出している。家庭向けのFamily PCもここの出版で、間口をどんどん広げている。あのB4判大、厚さ2cmの直販カタログ誌Computer Shopperもここが版元である。
 その他、パソコンの各種情報をパソコン通信で配信するInterchangeという仕組みが昨年デビューした。PC week、PC magazineなど、Ziffの持つ膨大で良質な情報をうまく検索する仕組みがデータベース・サーバーとWindows版のパソコン通信ソフトにより実現されている。コンピュータ業界の人間なら誰もが得たい情報をすぐに取り出すことができる。また、分野をコンピュータに限定して、誰もが思い付くアイデアをきちんと実現する力を持った会社である。
 出版以外にも、DTPのSeybold、ネットワークのInteropを吸収して数年前に立ちあげた展示会部門Ziff-Expoがあり、Seybold Seminars、Interop + Networld、Windows Solutions、Digital Worldなどの展示会を行っている。特にInterop + Networldは、Internetの普及や情報ハイウェイ構想と絡んで急速に規模を拡大しており、毎年San FranciscoとAtlantaで、春のComdexを凌ぐ規模で開催されている。
 Ziff-Expoは日本のソフトバンクが購入したので、社名が変わることになる。
・IDG
 出版が主体の会社で、週刊のComputer world、InfoWorld、月刊のPC worldなどを出している。雑誌のMac worldは別会社である。調査会社のIDCはコンピュータの出荷台数などの市場調査で定評がある。また、アジアへの進出にも積極的で、中国や新興著しいベトナムのコンピュータ情報分野で大きなシェアを持っている。展示会では、有名なMac Worldを主催しており日本では、Windows World、Media World、Sun World、Object World、Mac Worldと積極的な事業を展開している。
・CMP
 Computer Reseller News、Computer Retail Weekという販売のプロ向けの週刊誌で伸びてきた会社でVAR Business、Windows Magazine、Home PC、Network Computing、Open System Today、OEM Magazine、...と実に14種類の雑誌を出している。
・Miller Freeman
 Dr. Dobb's Journal、Microsoft Systems Journal、OS/2 Magazine、DBMS、Game Developerなど、完全な技術情報誌ばかり15種類出している中堅の出版社である。技術レベルは高く、書籍部門のM&T Booksも良質の技術書を多数出している。
・McGraw Hill
 BYTE誌がお馴染みだが、LAN Times、Unix Worldなどもここである。ハードカバーの技術書も多数出している。


その他
日本から、そしてアジアから
 毎年東洋系の人が、参加者そして出展者で増えている。
 日本からのツアーもものすごい数である。最大手のコンピュータ・ニュース社のツアーが百数十名、そのほか近畿日本ツーリスト、IDG、月刊アスキー、日本パーソナルコンピュータ・ソフトウェア協会(JPSA)、CANON、東芝などの各企業も団体で大挙日本から見学に訪れている。
 国別ブースも、香港、韓国が出しており、パビリオン形式で小さな区画に分けて展示を行っている。韓国ではSamsungがCANON、RICHOなどと同じ規模のブースを構えていた。韓国からの見学者が多いようで、韓国語をよく耳にした。
 日系企業もNEC、Fujitsu、HITACHI、TOSHIBA、Panasonic、EPSON、SONY、CANON、RICHOとほとんど出ていたが、どこもいつもの部品展示である。液晶ディスプレイ、CRT、ハードディスク、PCMCIAカード、ノートパソコンなどが各社のブースに並んでいる。日系企業では、Sandsの地下で、SONY Electric Publishingが昨年同様CDタイトルなどのソフト展示を行っていた。MTVの人気キャラクターである悪ガキBeavis & Butterheadのスクリーンセーバーは欲しくなってしまった。

Folio
 3年前から、重い展示会ガイドブックといっしょに、FDをくれるようになった。最初は5インチ1枚だったが、昨年は3.5インチになり、今年5月のComdex Springではいよいよ検索ソフト「Folio」がWindows対応となった。1kgのガイドブックが、我がDELLにインストールすると、3.6kgになってしまう。Folioはもちろんフルテキスト検索が行えるので、「SGML」に関連した製品展示が2ヶ所、「Internet & Software」で12ヶ所などすぐに教えてくれる。
 来年は写真と会場見取り図も入れてもらいたい。

The Interface Group
 Comdexの主催者である。世界最大のコンピューターショウであるComdex Fallを運営しているが、その他、日本ではIDGが開催しているWindows Worldも米国ではここが主催者である。Comdexは春のAtlanta、秋のここLas Vegasのほか、カナダ、ブラジル、メキシコなどでも開催されている。Microsoft Windows専門の展示会である「Windows World」は昨年1回追加されて3回となったが、来年は4月のAtlanta、7月のChicago、そして9月のDallasで開催される。
 Comdexは7、8年前に日本で一度だけ開催されたことがあるが、現在は日本から撤退している。来年10月にSingaporeでComdex Asiaが開催されるし、日本からの動員力からも分かるように知名度は抜群なので、そのうちComdexの日本再上陸もあると思う。
 来年は、13日(月)から17日(金)まで、同じ場所で開催される。

Comdexに出展しよう
 出展料は1平方フィート(ft)あたり42.95ドル。来年4月24日からのAtlantaのComdexなら40.95ドル。最小の10ft.×10ft.(3m×3m)で43万円。日本の1コマが大体3m×3mで40万円なのでほぼ同じ料金である。40ft.×50ft.の個室で860万円。これで世界のComdexに出展できるのである。後は装飾とマシンだが、マシンはノートを何台か日本から持ってきてもよい。装飾も主催者に依頼できる。これに説明員の渡航費用を加えても、最小ブースで100万円、72平方メートル(22坪)程度のまともな展示でも500万円もあれば可能である。
 どうです皆さん、来年のComdex Fallに出展してみませんか。自社の技術や商品を世界に問うのも結構。とにかく参加してみるのも良いことだと思います。
 それに、Comdexへの日本からの参加者に自社製品をアピールする機会にもなります。業界の主立った人が見学や商談で訪れるので、日本の商談をLas Vegasで行えるし、相手もどうせホテルで寝るだけなので時間に余裕がある。日本よりゆっくり付き合ってくれるかもしれません。

フロッピィが捨てられますか
 例年、Comdexで集めた資料はフェデラル・エクスプレス(FedEx)のBig Box 2箱分。この荷物を日本に送っていた。Big Boxにはレターサイズの書類が2列入り、厚さは10cm以上あるので、積み上げれば40cmもの資料を持ち帰っていた。それを今回は止めてしまった。理由は単純で、日本で資料を眺める時間などないのである。できるだけこの原稿に書いて、メモといて残しておこうとしている。
 カタログ類もできる限りもらわないようにしたのだが、今、ホテルのテーブルには、40cm以上の資料が積み上げられている。その内半分は雑誌や新聞である。毎日「Comdex Daily」という120〜140頁もある新聞が出されるが、これは捨てる。ホテルがLVCCに近いためか、毎朝この新聞以外に、週刊、月刊のコンピュータ誌がたくさんドアの外に置いてある。CMP社のものが多いが、これも読まずに捨てる。会場でもらった雑誌も、Family PCとMultimedia以外は捨てた。それでも、10cmほどの資料をトランクに入れた。残った資料の4割がMicrosoftのものであった。
 次は、CD-ROMとフロッピィだ。CD-ROMが12枚、製品紹介をCDで行う会社が増え、4、5枚入手したが、この種のものを2枚だけ捨てた。本当に持ち帰って見るのは、4、5枚だと思うが、開発ツールのCDなど捨て難い。まともに集めれば、20数枚は入手できたと思う。
 フロッピィも14枚。愛機DELL Latitudeにインストールして見てみたが、使ったのは2枚だけ。社内で使えそうなのが、3枚。残りの11枚は不要だがもったいなくて捨てられない。トランクに入れても場所を占めないので、持ち帰って再利用することにした。

ソフト3本59ドルに4本のオマケがつく
 帰りは毎年、San Franciscoに数泊している。今回も2泊して、郊外型パソコンショップのFly'sと都市型ソフトウェアショップのEgg Headに行った。Egg Headで、オーディオCDのプレイヤーソフトCD Master、クリスマス物のChristmas for Windows、Asymetrix Entertainment社のPink Pantherの3本を購入した。〆て税込み59ドルである。安くなったものだ。数年前は3本買えば500ドルを超えていたと思う。
 料理のレシピ、ワインリスト、全米の全電話番号だの、データ依存型のCD-ROMタイトルがドンドン増えている。CD-ROMタイトルは、パソコンショップでしか販売されていないが、今後、マルチメディア・タイトルが飛躍的に増加するのが目に見えているので、そのうち書店での販売となるであろう。データ依存型のCDは書店に置かれていても違和感がない。日本の広辞苑や英和辞典などのCD-ROMは書店で売られているが、供給形態が変わっただけなので、サポートの問題もないので、書店ルートでの販売が適当であろう。米国の販売ルートの事情があるとおもうが。
 さて、この3本のソフトをレジに持っていったら、おまけに4本のソフトをくれた。内3枚はCD-ROMである。CD-ROM媒体を使った雑誌であるInteractive Entertainmentには、ゲームのデモ版が7本入っている。Lotus galleryはLotus社の123、AmiPro、Freelanceなどを「マルチメディア」で(この単語ほど意味が曖昧なものはない。ここでは「アニメーションや言葉を使って」の意味)紹介するものである。これらの45日間だけ使える体験版も入っている。WordPerfect社のCDは最初のトラックで彼等のアプリケーション統合コンセプトであるSIX.Oの説明。2トラック以降は、普通のデジタル・オーディオで今風の歌が入っている。ハレルヤ、ハレルヤというのが多い。
 もう1枚のFDが優れ物である。前回9月に来たときにも貰ったのだが、Second Natureという団体のサンプルである。スクリーン・セーバーと壁紙ソフトそして、VGA、256色の写真が20枚入っている。この写真が素晴らしい。9月にもらったものは、販売しているイラストや写真のサンプルだったが、クオリティが高かった。今回も冬景色の写真が美しい。
 結局、今回の旅で入手したCD-ROMは45枚、FDは24枚であった。来年はCD-ROMが100枚を超えるかもしれない。40cmの資料も見られないが、45枚のCDも見られるわけがない。溢れる情報の中で、自分の得たいものを手に入れるのは至難の業となりつつある。

Kazuo Shimokawa [EAST Co., Ltd.]